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子供の相撲
第二章
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「万歳爺は子供であられる」
「だからですね」
「旦那様に何も出来ないですね」
「左様ですね」
「うむ、何か出来るまでにだ」
 まさにその前にというのだ。
「わしはこの立場を確かにし」
「この清で誰も歯向かえない様にしますね」
「皇族の方であろうとも」
「そこまで至りますね」
「そうなる、では今のうちにな」
 皇帝が子供のうちにというのだ。
「我が一族の地位を確かなものにするぞ」
「わかりました」
「ではその様に進めていきましょう」
「皇室ですら逆らえないまでに」
「そこまでの地位になりましょう」
 一族の者達も頷いた、そして。
 オボイにだ、こう言ったのだった。
「万歳爺は相撲ばかりです」
「それに興じておられるばかりです」
「やはり子供ですね」
「相撲に夢中です」
「相撲は身体を鍛えるからいいが」 
 オボイもこのことを知っていて笑って話した。
「しかしそれだけだ」
「身体を鍛えるだけです」
「他の何でもありません」
「権勢とは何の関係もありません」
「どうということはないですね」
「存分に楽しんで頂く」
 その相撲をとだ、こう言ってだった。
 オボイは康熙帝がまだ子供で相撲に興じてばかりであることに何も思わなかった、彼は自身と一族の地位を盤石にすることだけを考えていた。
 国政は全て彼が仕切り彼なくして清は動かなくなっていた。それを見て誰もがこのままでは清はオボイのものになると思った。
 そしてだ、密かにこう囁いた。
「肝心な時に皇帝がご幼少だとな」
「やはり国は治まらないか」
「先帝陛下が長く生きておられれば」
「まことに残念だ」
「折角明の領地を全て手に入れたが」
「ここでその政を確かなものにすべきなのに」
「万歳爺が子供であられると」
 それだけでというのだ。
「よくないな」
「全くだ」
「やはり肝心な時は万歳爺は確かなお歳でないとな」
「そして確かな方でないと」
「ご幼少ではどうしようもない」
「出来ることはない」
「国も保てない」
「そうなるな」 
 項垂れて言う者が多かった、だが皇帝は子供の側近達と共に相撲ばかりしていた。誰もがこのままオボイが揺るぎない者になると思った。 
 だがある日だ、オボイのところに康熙帝から使者が来て言ってきた。
「相撲にか」
「はい、オボイ様もです」
 使者はオボイに話した。
「来られて」
「観る様にか」
「言われています」
「わかった」
 軽い気持ちでだ、オボイは答えた。
「ではな」
「来られますか」
「万歳爺のお誘いだ」
 表面上は忠誠を誓って答えた。
「ならな」
「来て頂けますか」
「無論だ、すぐに参上する」
「それでは」
 使者は口の端を微かに笑わせて応えた、そうしてだっ
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