暁 〜小説投稿サイト〜
少女は 見えない糸だけをたよりに
第一部
1-1

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「おばあさん このかき揚げうまいねぇー」

「そうカナ 島で取れた小魚とこの子が浜の岩場で拾ってきた海藻を刻んだだけじゃけー」

 島に遊びに来ている若い男の人のふたり連れ。民宿に泊まっているんだけど、お昼ご飯に、この古びた食堂を見つけて入ってきたのだろう。小アジを焼いたのと、かき揚げの定食。さっきから、おいしそうにご飯をかっ喰らうように食べている。

「この島は、泳ぐ以外に見るとこも無いんやな―」とAさんが

「島の高いとこ登ったら、船が通るのも見えて、遠くの島も見渡せるケン」と、私がぼそっと、教科書に眼を落しながら言ったら

「そうか 暇やし、行ってみようかなー どれくらい歩くの 暑いかな」

「夏だから 暑いよね お客さんやったら30分くらい」

「微妙なとこやなー ちょっとした登山やなー」と、Bさん

「明け方やったら 朝日も見える」と、私はそっけなかった。

「君は中学生? お店の手伝いかい?」と、Aさんが失礼なことを

「高校生! 今、夏休み」

「あー ごめんな そーいえば、それ数Tやなー」

「そんじゃぁ 明日の朝登ってみようぜ しゃーないし、又、泳ぎにいくかー」と、Bさん。

「岩場 知らんやろ 連れてたる」と、私も暇つぶしで言ってしまった。

「待っとって 着がえるし」と、立ったつもりが、机の脚に引っかかってしまって・・Aさんが受け止めてくれた。

「あっ ありがとう」

「いゃ 君は・・」と、言いかけていたのを私は「おばあちゃん 出て来るね」と、奥へ入っていった。

「おい はじめ 今な 柔らかかった 気のせいか胸も・・」

「なにゆうてんねん 巧 男色の趣味があるのとちゃうかー それとも、女が恋しいのかー」

 私が、タンキニの水着とTシャツに着替えて、出て行くと、ふたりは声も出ないで私の上から下まで見つめていた。迷っているみたい、男か女かと。やっぱり、そうだ、男の子かと思っていたみたい。私は、髪の毛も刈り上げて短くして、眉も濃くって、日焼けして黒い方だし、胸だって大きくないから、男の子みたいと周りからも言われるのだ。

「あー ごめん 男かと思っていたからー 女の子だよね?」と、Aさんが、私とBさんの顔の表情を伺う様子だった。

「そーだよ 女で悪かったかー いくよ」と、いつも間違われるから私は気にしてなかった。 

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