第一章
[2]次話
やることやっても油断は
広川芳次は在宅ワーカーである、幾つもの仕事を掛け持ちして朝から晩まで自室でパソコンに向かっている。
家は母の時枝t二人暮らしだ、母はパートで働いているが。
時枝は夕食の時に我が子に言った、もう六十近く顔の皺が目立つが背筋はしっかりしていて表情も年老いていない。長めの髪の毛も黒く肉も然程ついていない。
「ちょっと健康診断言ってきたら?」
「えっ、何で?」
息子は母に聞き返した、背は一六二程で濃く鉤型の眉を持っている、硬く太い感じの黒髪は癖があり顔立ちはきりっとしている。
「また急に」
「だってあんた毎日パソコンに向かってるでしょ」
「仕事だからね」
息子は母にこう返した。
「それも当然だよ」
「在宅ワーカーとしては」
「最近ユーチューバーもはじめたし」
こちらも収入の為だ。
「ゆっくりの解説でね」
「ゆっくりが何かわからないけれど」
それでもだ、母は息子に話した。
「本当に一度ね」
「健康診断になんだ」
「あんた大学出て今のお仕事してね」
大学の頃から在宅の仕事をはじめている。
「ずっとでしょ」
「それはね」
息子も否定しなかった。
「行ったことないよ」
「だったらたまにはね」
「俺まだ二十六だけれど」
「若いからっていうの」
「そうよ、出来たら毎年ね」
「行かないと駄目か」
「そう、定期的にね」
そうしてというのだ。
「その方がいいから。お父さんだって六十前に脳梗塞でだったでしょ」
「そうだったね」
父は彼が大学を卒業した時にそれで倒れて世を去っている、そう言われると芳次にしても断れなかった。
「わかったよ、じゃあ」
「ええ、行ってきてね」
「そうするよ」
こう言ってだった。
芳次は市立病院がやっている人間ドッグに行った、そして結果を見て真っ青になった。
「何だよ、血糖値も乳酸地も脂肪率も皆だよ」
「悪いの?」
「税人病一歩手前だよ」
そうした診断結果だったというのだ。
「要注意って言われてるよ」
「やっぱりね」
母はその話を聞いて頷いた。
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