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Fate/WizarDragonknight
覚醒
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「怪獣だけ……本当に変わっているよ。君は」
「あれ?」

 だが、待てど暮らせどムーンキャンサーは口を開かない。やがて、その口が何度も猫缶に触れると、ムーンキャンサーは鎌首を上げた。

「食べないの? ……そもそも、口はどこにあるの?」
「そもそも缶詰なんて、開けないとどうしようもないものなんじゃないかい?」
「あ」
「おいおいマスター。もしや、缶切りを忘れた、とか言わないよね?」

 トレギアの言葉に、アカネが背筋を伸ばす。
 やがて無表情のまま、彼女はトレギアへ振り替える。

「どうしよう……? 私、缶切りなんて持ってない。買ってこなくちゃだめ?」
「はあ……何で開けられない猫缶を買ってくるかなあ……」

 呆れたトレギアは、頭に手を当てる。
 だがアカネは、表情を一つ変えずにトレギアへ缶詰を差し出した。

「はい」
「……何だい?」
「開けて。できるでしょ。そんなに爪長いんだから」
「私の爪は缶切りじゃないんだけどなあ?」

 トレギアは首筋を掻きながら呟いた。
 だがアカネは全く動かない。その目が、「早く開けて」と命令していた。

「全く……」

 折れたトレギアは、缶詰を受け取り、左手で指さす。指先より放たれた小さい蒼い雷が、缶詰の縁を焼き切っていく。

「どうやらマスターにとって、私の価値は缶切り程度ということのようだ」
「そんなことないよ? ただ、便利な能力があるよな〜って思っただけ」
「便利屋扱いかい……ほら、開けたよ」

 トレギアは蓋を引き剥がした。
 詳しくは分からない魚の発酵食品に、トレギアは思わず鼻をつまんだ。

「酷い臭いだな……」
「苦手なんだ」
「単純に嫌いだ。うっ……」

 トレギアは忌々しく、白い手拭いを取り出した。そのまま缶詰の中身が跳ね返った手を拭う。だが。

「取れない……」

 拭いても拭いても茶色が残る。

「……ん?」

 その時。ガサゴソと、物音が聞こえてきた。
 振り向けば、ムーンキャンサーがコンビニ袋の中に首を突っ込んでいた。
 トレギアに缶切りをさせた容器を放り出し、ムーンキャンサーの首が、まだ封を切っていない缶詰めを転がしていた。

「ああ、何やってるの」

 アカネが呆れながら、椅子から退く。ムーンキャンサーが散らかした缶詰をいくつか回収する。
 だが、それよりも先。ムーンキャンサーがたった今、新たな缶詰を転がした。

「ああ、また……」

 アカネが回収しようと手を伸ばす。
 だが、それよりも先にムーンキャンサーの脚らしき触手が動いた。
 猫缶に狙いを定めた触手。すると、その先端より刃が生えてきた。
 その突然に驚き体を震えさせるアカネ。トレギアも、その体の一部の変化に
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