覚醒
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て机に向き直った。
トレギアが彼女の頭越しに覗き込めば、アカネが手元で粘土細工をこねくり回していた。
「精が出るね。また新しい怪獣かい?」
「デバダダンは良い怪獣だと思ったんだけどなあ」
「悪かったよ」
アカネがむすっとした顔をしていた。
やがてしばらく粘土細工を弄っていたが、アカネは「ああもうっ!」と叫んで、背もたれによりかかった。
裸足を机の上に乗せ、ぐったりと体から力を抜く。
「トレギア、そこにいると気が散る!」
「おやおや。これは失敬。なら私は退散するよ」
「待って。この怪獣、取り扱いが分からないんだから、行かないでよ」
「どうしろと……?」
トレギアは結局足を止める。
やがて、アカネは呻き声を上げながら作業を続け。
「はい」
「……何だい?」
「新しい怪獣。できた」
アカネはそう言って、トレギアが拭いている方の手に人形を置いた。
「……随分と適当じゃないか?」
トレギアは人形を見下ろしながらそう呟く。
顔の部分が斜めに傾かれている上、胴体もずんぐりとしており、とても激しい動きに適したものとは言えない。
「もういいじゃん。中途半端だけど、今はこの卵が気になってあんまり集中できないから」
「ふうん……まあいいよ」
トレギアは軽く首筋を撫でる。トレギアの目は、もうマスターであるアカネではなく、その手元の人形だった。四肢が大雑把に作られており、傾いた頭は、怪獣という呼称の恐ろしさを再現しているとは言い難い。
「さて。インスタンス アブリ……」
そのまま、トレギアは技を発動しようとしていた。
だがその前に。
岩石が砕けていく音が響く。
アカネとともに振り向けば、新たに生まれた命がその姿を見せていた。
「生まれたようだね」
トレギアはそう言って、ほほ笑む。
卵の役割をしていた岩石。みるみるうちにそれは破壊されていき、やがてその欠片の合間より、不気味な黄色が覗いていた。
「どうだいマスター? お気に召してもらえそうかな?」
そして、屈むアカネ。その目の前、岩の卵の合間にこそ、トレギアの目的のものがあった。
巻貝のような体。そして、そこから生える肉体。
オレンジ色の蝸牛、または烏賊などの軟体生物。無数の触手が脚のように広がり、小さいにも関わらず、大きな存在感を知らしめている。
「これが……怪獣?」
「ああ。私も詳細は知らないが。私の故郷には色々と怪獣の情報が集まっていてねえ。これはどうやら、宇宙のあちこちに存在する危険な怪獣らしい」
「……この子が……?」
危険な怪獣。
その響に、アカネは眼鏡の下で顔を輝かせた。
怪獣などが好きだというこの少女
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