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孫の様な女性と
第二章

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 二人は結局結婚した、祐一郎の父の龍之介はもう顔は皺だらけで白髪の多い老人であったが妻となる佐緒里は長い黒髪が奇麗で面長で穏やかな顔立ちと白い肌の一五二程の背の楚々とした外見の女性であった。高校を卒業してOLをしていて龍之介とは同じレストランの常連同士で知り合ってからのことだった。
 佐緒里は結婚してすぐに父親そっくりの顔の男の子を産んだ、だが龍之介の子供達も彼等の家族も親戚も全員不安だった。
「七十代で子供が出来ても」
「育てられるかしら」
「どう見ても先は短いし」
「身体も弱っていくのに」
「あの子が二十歳になる時龍之介さん九十四よ」
「その時まで生きられる?」
「生きていても元気じゃないだろ」
 こう言っていた、だが。
 龍之介は自分の子供慎之介と名付けた彼を見るとだった。
 これまで無頓着な方だった健康に気をつける様になり。
 運動をして食生活を律し規則正しい生活を送る様になった、それまで好きだった酒も完全に断った。
 そうして仕事を続ける妻に代わって我が子を育てていき。
 我が子が高校を卒業して大学に入学した時に子供や孫に曾孫親戚達に話した。
「子供がいなかったらな」
「ここまで生きられなかった?」
「そう言うの?」
「元気に」
「ああ、あの子がいるからな」
 九十を超えていても背筋はしっかりしていて目の光も強く顔立ちもだ、その顔で一同に言うのだった。
「ここまで頑張れた、人間頑張ろうと思えば」 
「頑張れるんだな」
「九十過ぎても元気な位に」
「そこまで」
「そうだ、あの子も大学に行ったし」
 彼は笑顔でさらに話した。
「後は結婚を見たいな」
「じゃあそれまでか」
「頑張るか」
「これからも」
「健康に生きてな、わしはやるぞ」
 笑顔で言ってだった。
 彼は実際に規則正しい生活をしていってだった。
 我が子を妻と共に育てて見守っていってだった。
 遂にだ、息子の結婚式を見てだった。  
 百歳を目前にして眠る様に大往生を遂げた、その時もう還暦だった祐一郎は妻に対して感慨を込めて言った。
「人間子供の為に頑張れるんだな」
「宋ね、幾つになっても」
「そう思うとな」
「私達の心配は杞憂だったわね」
「そうだな、親父は子供の為に頑張ったんだ」
 その感慨に満ちた顔で言うのだった。
「素直に思う」
「そうよね、素晴らしかったわ」
「全くだ、七十過ぎて子供が出来てもな」
「やっていけるのね」
「ああ、本当にな」
 こう言ってだった、彼は妻と共に末の弟に結婚祝いのプレゼントを送った。父の葬式の後でそうした。


孫の様な女性と   完


                  2022・4・23
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