第一章
[2]次話
流行りの髪型
一九八〇年、この歳広島県で高校教師になったばかりの富田恭介は四角く尖った口と細い目を持つスポーツ刈りが印象的な顔を顰めさせて職員室で言った。背は一七六程で引き締まっている。
「流行と言えど」
「ああ、今はだね」
学年主任の羽根田茂雄面長で額が広く丸眼鏡をかけた初老の男が応えた、見ればスーツはかなりくたびれた感じだ。
「松田聖子ちゃんが人気だからね」
「もうトップアイドルですね」
「それでだよ」
「女の子は皆ですか」
「聖子ちゃんカットだよ」
「そうなってるんですね」
「そうだよ」
羽根田は富田に話した。
「もう流行だからね」
「誰もが聖子ちゃんカットで、ですね」
「仕草とか喋り方もね」
こうしたこともというのだ。
「全部だよ」
「聖子ちゃん真似てるんですね」
「前はロングヘアでラッパのジーンズだったね」
「ああ、僕がまだ中学に入ったばかりの頃ですね」
「流行でそうなるんだよ、だからね」
「今はですか」
「聖子ちゃんだよ、そういうことだよ」
「そうですか」
富田は羽根田の言葉に頷いた、そしてだった。
教師としての仕事を続けていった、すると。
人気のアイドルや女優は次々に出た、それでだった。
「前は中森明菜ちゃん、今度は小泉今日子ちゃんで」
「聖子ちゃんは健在でな」
「早見優ちゃんも出て来て」
二十代後半になった時に教頭になった羽根田に話した。
「女の子皆ですね」
「髪型も仕草も真似てるね」
「そうですね」
「流行だからね」
「そうですか、今度結婚するんですが」
富田は自分のことも話した。
「髪型が今日子ちゃんなんですが」
「ああ、そうなんだ」
「そういうことなんですね」
「流行だからだよ」
「よくわかりました、じゃあ結婚決まったらお話します」
こう言って小泉今日子の髪型だが実は顔立ちは早見優系の彼女の紗理奈と結婚した。そして結婚して暫くするとだった。
妻は黒髪をロングにしてメイクも変えたがそれは。
「南野陽子ちゃんか?」
「どうかしら」
「いいんじゃないか?しかし今おニャン子が人気でな」
富田は今度はそうなった妻に二人のアパートの中で話した。
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