第二部 1978年
ソ連の長い手
欺瞞 その2
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篁だ。
上手く米国に誘い出す糸口にしたい」
静かに蓋を閉めると、左手に持ったシガーカッターで吸い口を切る
「ソビエトは彼を誘拐しようとして失敗した。
上手く行くかは分からぬが……、遣らぬよりはマシであろうよ」
CIA長官は男の提案に不信感を抱いた
何故、この期に及んであれほど否定していたゼオライマーに関する話を持ち出すのかと……
「副大統領、お聞きしたいことがあります」
CIA長官は男の顔を見つめる
「今回の翻意の理由は何ですか」
黒縁眼鏡の奥にある瞳が合う
「出所不明の文書が持ち込まれた話は聞いていよう」
懐中より、細長い葉巻用のマッチを取り出すと、机の上に置く
箱から抜き出した軸木を勢いよく、側面の紙鑢に擦り付ける
「ソ連公文書の形式で書かれた怪文書、約数百冊……。
秘密裏に東ドイツ国内、ベルリン市内に核戦力を持ち込む話……。
シュタージの主だったメンバーがKGB工作員であったことが記されていた」
燃え盛る火を見つめながら、葉巻をゆっくり炙る
「また、我が方が用意した間者が裏付けを取った。
結果から言えば、駐留ソ連軍の小火器や戦車保有数まで正確……。
独ソ双方の資料を突き合せた結果、寸分違わず書かれていたこと。
以上の事を考慮すると、ソ連公文書の蓋然性が高い」
数度、空ぶかしをした後、念を入れて葉巻に着火する
紫煙を燻らせながら、長官の方に視線を移した
「君には、飯と一杯食わされたよ。
こんな隠し玉を用意してまでゼオライマーに惚れ込んでいたのだから……。
誓紙迄認めた事だ……、この件は君に預ける。
機密費で存分にやり給え」
猶も怪訝な表情を浮かべる長官に対して、苦笑しながら答えた
彼の心中は穏やかではなかった
自分の知らぬ間に、何者かがKGBの秘密文書をホワイトハウスに持ち込んだのだ
数百冊の単位で……
常識では考えられぬ手法を用いねば、その様な事は無理だ
其の事を思うと動悸がして、空恐ろしくさえなる
「分かりました。手抜かりの無きように進めます」
そう言うと着席した
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