第二部 1978年
ソ連の長い手
牙城
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側に乗り込む男の方を振り返る
「あんたも、人の事は言えんだろう」
彼の一言に唖然とする
「え……」
正面に顔を戻す
「体付きの割に、胴回りが若干太く見える。
それにトレンチコートを愛用しているのは、暗器を隠すばかりではあるまい」
「流石だ」
一言漏らすと哄笑する
「何か飲むかね」
そう言うと男は、箱よりガラス瓶を取り出す
丸みを帯びた独特の形、スーパーニッカである事が判る
「悪酔いするから、酒は飲まぬ」
そう言って、瓶を突き返した
「パイロットが、車酔いとはね……」
蓋を開け、グラスに注ぐ
先程の箱より常温の水を取り出し、注いだ
男より、瓶入りのオレンジジュースを受け取る
栓抜きで開け、一口に呷る
飲み終えると、瓶ごと男に返した
男はその様を見て不敵の笑みを浮かべる
「仮に俺が撃たれた場合はどうする……」
その質問をした瞬間、男は真顔になった
「直ぐに雪辱を果たしてもらう。帝国政府の体面に関わるからな」
ベルトのバックルにある装置が振動する
次元連結システムを応用した装置には特別なレーダーが備え付けてあり、感応する仕組みになっていた
彼は周囲を警戒した後、バックミラーを覘く
背後より高速で近づいて来る一台のサイドカー付きオートバイ
右側の側車には折り畳み式銃床のカラシニコフ自動小銃を持った人物が見える
フルフェイスのヘルメットで、黒革製のジャケットを着て居るのが判った
「如何やら、雪辱を果たされるのは俺達の様だ」
右手を懐中に入れ、拳銃を取り出す
「応戦したほうが良いな」
男は、唖然とするとトランクを手に取る
閉じている鍵を開けると、中よりウージー機関銃を取り出し、弾倉を込める
コッキングレバーを引き、射撃可能なようにする
窓を手動ハンドルで全開にし、身を乗り出す
左側からくるオートバイに対して、射撃する
電動工具に似た轟音が鳴り響き、薬莢が勢いよく地面に散乱する
男は、左手で、帽子を押さえながら社内を振り向く
「飛ばせ」
そう叫ぶと、速度を上げる
急加速によりエンジンの回転数が上がり、悲鳴の様な音が聞こえて来る
対するオートバイの方は、ウイリー走行をしながら避ける
間隙を縫って、単射で数度反撃してくる
(「おそらくバイクは軍用バイクのウラル。その上に手練れの暗殺者か……」)
マサキは、冷静に事態の推移を見つめた
男は、運転席を守ろうと懸命に銃弾を振りまく
これが、右ハンドルの国産車であれば違ったであろう……
そう思いながら、数度弾倉を変え、射撃する
バイクは、機関銃の射撃に当たることなく走り去っていった
結局、バイクには損害らしい損害を与えられず、此方も被害はなかった
だが、男の心中は穏やかではなかった
マサ
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