第二十ニ章 そう思うなら、それでも構わない
[2/22]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
認めない?
疲れたよ。
あと何人、殺せばいいの?
誰か、教えてよ。
ぼくこれからお母さんに殺されるの?
腐った死体が、うず高く積み上げられて山を作っている。
どさり。
さらに積み上げられて、山がまた少し高くなる。
干からびた、
腐って、じくじくとウジの湧いた、
片目をくり抜かれた、
頭を叩き割られた、
全身いたるところ矢や剣の刺さった、むごたらしい状態で、
でもまだ、それは生きている。
あと何時間、あと何分、生きていられるか分からないが、まだかろうじて息はある。
だが、故の残酷さよ。
世の、神の無情よ。
震える、まぶた。
残っている片目が、うっすらと開く。
見事に澄み渡る、青い空が広がっている。
最後の力で、腕を、腐った腕を、動かした。
手を伸ばし、空を掴もうとする。
永遠の闇が落ちた。
だって、あたしのためだったなんて、そんなこと、そんなこと知らなかったからっ!
殺しちゃった。
殺しちゃったよ!
ねえ!
滅びゆく身体で、ただ待っていただけだった。
ひたすら、父の帰りを。
家族に会うこと。
それ以外になにも望んでいない。
求めてなんか、いなかった。
なにが、魔女だ。
何故、火に炙られ、死ななければならない。
我々が、誰に、なにをした。
答えてみろ。
もしも生まれ変われるならば、
必ずお前たちを殺してやる。
呪ってやる。
お前たちがもし生まれ変わるのならば、
何度生まれ変わろうとも、呪ってやる。
千回。万回。
永劫。
死ぬだけなら、よかったんだ。
信じたままで、いさせて、欲しかったのに。笑って死ねた、かも知れないのに。
あなたを呪わせないで、欲しかったな。
呪わせるな。
呪わせるな。
呪わせるな。
呪わせるな!
ずっと、ただ、それだけを願っていたのに。
でもあなたは、呪わせたんだ。
呪わせたんだね。
2
それは、膨大な記憶であった。
何百人、何千人もの、膨大かつ壮大な、世を呪うためだけの辞典とも呼べる、記憶であった。
脳の、
肉体の、記憶。
流れる血液の、記憶。
細胞の、記憶。
DNAの、記憶。
終末に覚った、哲学の独自解釈の記憶。
記憶の輪環が自分を縛り締め付けて感じる、原初的な恐怖とそして吐き気。
経験学習による後天的な理論としての恐怖と、怖気、消失感。
しかし、その連環の手綱を握って締め付けているのは自分である、という自己矛盾。
記憶の輪環に、ガリガリガリガリ脳を擦られ削られながら、それは走馬燈のように儚いもの
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]
しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2025 肥前のポチ