暁 〜小説投稿サイト〜
冥王来訪
第二部 1978年
ソ連の長い手
首府ハバロフスク
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)る……
青磁の茶碗を受け取り、熱い茶を一口含む
茶器をテーブルに置くと、ふと漏らす
「良い茶葉だ、気に入った……。また買っておけ」
椅子に腰かけ、『ショカコーラ』(SCHO-KA-KOLA)という青い缶詰に入ったチョコを頬張る
風味は、チョコにしては固めで、程よく甘い……
どことなく米・マース(Mars)社の名品『スニッカーズ』(Snickers)に似た印象を受ける
 彼女は、革張りのソファーにまっすぐ腰かけた
机を隔てて対坐(たいざ)する
そして彼の姿を静かに見届けながら、手前に置いてある青磁の急須を持つ
左手を添えながら、空になった椀に熱い茶を注いだ

「俺の機嫌でも取りに来たのか……、まあ良い」
そう言うと、タバコを取り出し、火を点ける
「なぜ、次元連結システムの話をしたのか……。
俺自身が、奴等の中に不破を招く足掛かりとして、仕掛けた」
放たれた言葉に、彼女は驚く
目を見開いて、絶句する
その様を見た彼は、ふと失笑を漏らす
「勿論、奴等のために働くつもりはさらさら無い。
俺は、ある意味賭けて見ることにした。
連中が欲しがっているゼオライマーを餌にして、東欧諸国とソ連の間を引き裂く……」
湯気の立つ紅茶を口に含む
「東ドイツは、ソ連以上の情報統制社会だ……。
2千万人も満たない人口に対して、20万人の監視組織が暗躍している。
ベルンハルトとその妻と会った事は、すぐに露見しよう。
恐らく伝えた話も、彼等の口を通して指導部に漏れ伝わろう……」
灰皿に、灰をゆっくりと捨てる
「と、するならば、シュタージと関係の深いとされるKGBが黙っては居るまい。
先頃の失点を取り返そうとするはずだ……」
 
 急須から茶を注ぎながら、彼女は尋ねる
「どうして、その様な考えになられたのですか……」
目を閉じて、タバコを握ったままの右手を額に置く
すると、苦笑し始めた
「ソ連は、ゼオライマーを欲しがっているからさ」
額から手を離すと、彼女の顔をまじまじと眺める
「この際だ、詳しくかみ砕いて説明してやろう。
ソ連では第二次大戦以上の被害を出しながら、BETA戦争を行っている。
深刻な核汚染により疲弊した国土、成年男子の大多数が死滅するほどの敗走……。
加えて、遠隔地への運搬さえ儘ならないほどの流通システムの停滞。
自慢の鉄道網も戦争で寸断されたとなれば、収穫物も、産出地の倉庫で腐るばかりであろう。
従前から経済破綻に加え、住民には塗炭の苦しみを与えて、暴動が続発していると聞く」
不意に立ち上がると、開いている左手で、彼女の右腕を掴む
驚いて後ずさりするが、其の儘、右脇まで引っ張る
「天下にソ連共産党の健在ぶりと、その威信を見せつける方策とは何か。
そこで一気呵成にハイヴを攻略……。

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