第2部
スー
スー族の大陸
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た、すぐにお作りしましょう」
私の我が儘にも嫌な顔ひとつせず、料理長はあっという間に軽食を提供してくれた。
「余り物で申し訳ないですが、良かったらどうぞ」
「ありがとうございます!」
船での暮らしにすっかり慣れてしまった私は、すぐに料理が食べられるこの環境がどれほど貴重かを、すっかり失念していた。これから向かう先が、料理どころか食糧すら手に入れるのも苦労することを知らずに――。
そんな穏やかな(?)日常が続いていた、ある日のこと。ちょうど甲板にいた私は、ユウリに武術の相手をしてもらっていた。そんな折、船首にいた船員の一人が大声を上げた。見ると前方に、大きく広がる大陸がうっすらと見えているではないか。
「あれってもしかして……」
「ああ、次の目的地だ」
次の目的地、つまりスー族のいる大陸。
「おい、何間抜け面さらしてるんだ。ルカを呼んで降りる準備をするぞ」
ユウリの言葉に我に返った私は、急いで船室へと向かうことにした。
「今回は、何日くらいの滞在になりますかね?」
「そうだな。今までと違って、目的地が特定できないからな。とりあえず二週間後には戻ってくる予定だ」
いつものようにヒックスさんと今後の滞在時間を話し合うユウリ。
普段は港町か、なるべく町に近い船着き場に船を停めるのだが、これから向かう大陸は未開の地なので、スー族の里と言うのも、地図には載っていない。
ひとまずヒックスさんと地図を確認して話し合った結果、大陸の中央付近にある入り江に停泊することにした。海に面した場所の方が、人里がある可能性が高いと予想したからだ。
操舵がかなり難しい複雑な地形ではあるが、ヒックスさんたちにかかれば大したことはないという。ここは彼らに任せ、私たちはスー族の里を目指す。
「わかりました。では、くれぐれもお気をつけて」
船を進め、ようやく停泊できる入り江に到着したのは、お昼を少し過ぎた辺りだった。
接岸できないので途中から小舟に乗りしばらく進むと、ようやく小さな海岸に上陸した。
舟を降りてしばらく歩くと、無造作に生えた私の腰ほどもある雑草や、太陽を目指して伸びているのかというくらい背の高い木々が取り囲んでおり、もはや自然に支配されたかのような無法地帯となっている。
「……どこに進めばいいかわからないですね」
初めての大陸に、ルカもただキョロキョロと辺りを見回すばかり。
ユウリは方角を確認すると、地図を広げながら先へと進んだ。
行けども行けども人が暮らすような気配はない。見たことのない草木が生い茂ったけもの道を通ると、聞いたことのない動物の鳴き声が聞こえてきた。魔物かと思ったが、どうやら小動物のようだ。
その生き物は私たち人間を見た途端、瞬時に逃げ出した。見慣れない生き物に警戒したのだろ
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