第二百四十四話 青森入りその十七
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「だからっちゃ」
「そこが気の毒か」
「権力を持ったっちゃ」
中国を統一してだ。
「そして富もっちゃ」
「皇帝としてな」
「手に入れたっちゃが」
「それでもだな」
「孤独な感じがしてっちゃ」
その為にというのだ。
「可哀想な感じもするっちゃ」
「始皇帝は孤独か」
「そうも思うっちゃよ、うちは」
「確かに有能な臣はいてもな」
宰相の李斯等である。
「その者達も信じないでな」
「猜疑心は強かったみたいね」
奈央も言ってきた。
「どうやら」
「だから信じなかったか」
「誰もね」
「そして愛情もか」
「なかったのよ」
その心にはというのだ。
「あの人はね」
「孤独でか」
「そうだったのよ」
「そう思うと気の毒な部分もあるな」
「皇帝は頂点で」
その座にあってというのだ。
「至高であってね」
「それ故にだな」
「その座にいるのは一人で」
「同格の者もいないな」
「まさに一人よ」
「これ以上孤独な存在はないな」
「そして始皇帝もよ」
今話している彼もというのだ。
「とてもね」
「孤独だったな」
「そう、そしてね」
その為にというのだ。
「愛情もなくてね」
「猜疑心も深くか」
「その為だったかも知れないわね」
「あの統治か」
「法のみを求めたね」
「そして人間味がなくか」
「その政もね」
それもまたというのだ。
「そうなっていたのかもね」
「そういうことか、そう思うとな」
「始皇帝については」
「そうはなりたくないとな、気の毒とは思うが」
それでもというのだ。
「国だけでなく人も治めるのだからな」
「人間味も必要ね」
「そう思う、だが建築や旅行を趣味とし」
そしてというのだ。
「不老不死を求めたところはな」
「人間味はあるわね」
「その面があることはわかった、だが俺はやはりだ」
英雄はあらためて言った。
「始皇帝にはな」
「ならないわね」
「その様にする、法は厳しくするが」
それでもというのだ。
「人間味までは忘れない」
「そうして治めていって」
「蝦夷も豊かにする」
「それではね」
「手を打っていく」
蝦夷を手に入れる為のそれをとだ、こう言ってだった。
英雄は青森に入ってから次から次に手を打っていくことを強めた、そのうえで蝦夷の掌握を進めるのだった。
第二百四十四話 完
2022・2・1
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