傷跡
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もう、ほとんど暗がり。
太陽が地平線にほとんど沈み、もうすぐで完全な夜が訪れる。
司祭が教えてくれたのは、彼と出会った場所から五分ほど歩いた場所に会った。
工場街として栄えていたころは、労働者の憩いの場として繁盛していたのだろう。
すでにボロボロの廃墟となっている二階建てのスーパー跡地は、ホラー映画の舞台だと言われた方が分かりやすい。
「何か、無駄に時間かかったね」
ボロボロの建物を見ながら、ハルトは呟いた。
「ええ……さっきのあの司祭さんが、話が長かったから、ですね」
紗夜も少し疲れた様子だった。
司祭から、蒼井晶の場所を聞き出すことはできたはできたが、そこにいたるまでの道が中々長かった。やれ救済だ、やれ献身だと、話を聞いている内になにやら変な音がハルトの頭に聞こえてきたくらいだった。
だが、彼のおかげでこの場所に辿り着けたことには間違いない。
ハルトは司祭に感謝しながら、紗夜へ確認する。
「……紗夜さんも、本当に今行くの?」
この場所のことは可奈美やリゲルに連絡してあるが、彼女たちもどうやらこちらに来るまで少し時間がかかるらしい。
紗夜は不安そうな顔を浮かべながらも頷く。
「はい。これ以上待つのも少し危険でしょうし。松菜さんも、急いだ方がいいとお考えなのでは?」
「至り方が色々紗夜さんと違うと思うんだけどね」
ハルトは苦笑した。
「まあ、いいや。しつこく繰り返すけど、絶対に俺から離れないでね」
「はい」
紗夜が賛成してくれたのを確認し、ハルトはスーパーの入り口を開ける。
ガラスがそっくり抜け落ちた扉を開けることに意味があるのかは分からないが、ガラス片がある床を踏みながら進んでいく。
「ほとんど見えない……やっぱり出直したいんだけどな」
『ライト プリーズ』
ハルトはそう言いながら、指輪を腰のベルトに当てる。
すると、指輪より発せられた光が、スーパー内の闇を払いのける。
消費期限が切れた食品類が散乱し、棚も倒れたり壊されていたり。客だったら絶対に来たくないなと思いながら、ハルトは何度もライトの魔法を使う。
「蒼井さん! いませんか?」
ハルトの後ろで、紗夜が呼びかける。
だが、彼女の声は暗闇の中で反芻するだけで、何も帰ってこない。
「本当にここにいるのか? そもそも……えっと、蒼井晶ってモデルでしょ? こんなところに一か月もいられるものなのかな?」
「考えにくいですよね。松菜さんは?」
「俺は構わないよ。見滝原に来るまでの旅で、こういう廃墟何回か寝泊まりしてたし」
「さ、流石ですね」
「ありがとう。……この缶詰まだ開けられてからそんなに経ってない……」
ハルトは手頃な棚に置かれていた
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