傷跡
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ルトはそう言って、バックヤードの入り口を再び開ける。
数秒だけ俯いた紗夜は、やがて頷いてハルトに続いた。
そうして、再び止まったエスカレーターから外に出ようとした、その時。
「なあんだ……二人とも充実な参加者ライフをエンジョイしているわけか」
その声に、ハルトと紗夜は凍り付く。
西日が微かに差し込むスーパー。換気扇の合間から差し込む赤い光が、ほんのわずかな空間の正体を明かす中。
コツッ コツッ と、誰かの足音が聞こえてくる。
「ふふっ、当然だよね〜」
その声は、明らかに少女の物だった。
「あたし、あなたたちと会えて本当にラッキーだったわ」
薄い光の中から現れたそれは。
「らっきーらっきー」
赤い夕焼けの光の中、徐々に彼女は現れた。
「あきらっきー……」
「蒼井……晶……!」
アヴェンジャークラスのマスター。以前の戦いでサーヴァントを失い、聖杯戦争の資格を剥奪された少女。そして今、ハルトと紗夜が探しに来た少女。
以前ラビットハウスに来たときと同じく、栗色の長い髪と整った顔立ちの少女である。だが、その表情は邪悪な笑みを見せており、とても穏やかとは思えない。
「ねえ、見てよこれ……どう思う? この顔?」
晶は自らの頬を撫でながら言った。
そして、夕日に照らされたその正体に、紗夜が小さな悲鳴とともに口を覆う。
そこにあったのは、生々しい傷跡だった。何か刃物で傷つけられた跡なのか、もう治ることはないであろう傷跡が、彼女の美しい顔により強く刻まれていた。
晶は割れたガラスを踏み砕きながらも、どんどん近づいていく。
「すっごい醜いでしょ? 哀れでしょ?」
足取りをふらつかせながら、こちらににじり寄って来る。
「ヒヒッ! 凄いよね……日菜の破滅を願ったらさ……自分が破滅しちゃった……!」
「……!」
紗夜が後ずさりした。彼女の前に、ハルトが盾となるように立ち塞がる。
「日菜を潰そうとしたらさ……自分がモデルなんかやってやれる顔じゃなくなっちゃった…キヒッ ねえ、これ面白くね?」
「……連れ戻しに来たよ。ここからね」
「連れ戻しに? あたしを? 笑っちゃうよね?」
晶は首を傾けながらケタケタと笑い声を上げた。
「モデルなんてやってられない顔になっちゃってさ? もう価値のないあたしを連れ戻しに来た? あはっ! ふざけてんだろ?」
彼女は顔をくしゃくしゃにした。
「なあ、笑えよ! 超絶可愛いあきらっきーがさ、こんな最終フェイスになっちまったんだよ? 見ろよほら、哀れだろ? あんたのせいだよ氷川紗夜。あの時スイムスイムが、アンタへの命令を間違えたから……だからあたしはこんな顔
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