第2部
エジンベア
ノルドの過去
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「……つまり、振り出しに戻ったって訳か」
そう言うと、大きくため息をつくユウリ。それに反応するように、ノルドさんは申し訳なさそうに項垂れる。
「すまんのう。あのころはわしも魔王を討伐する心も折れてしまってな。もう二度と前線には出ないとサイモンに訴えたほどだったんだ」
「いえ、私たちも不躾な尋ね方をしてしまってすいません」
そう、私たちが彼を責める権利はない。もし私たちが彼と同じ状況になっても、そうならないとは言えないからだ。
「その代わり、他のオーブのことなら少し知っている。パープルオーブは知っているか?」
「ええと確か、アンジュさんて人が持ってたんですよね?」
私が答えると、ノルドさんは大きく頷いた。
「去り際にアンジュは、わしだけに話してくれたんだ。『自分の故郷へ帰る』と。彼女の故郷はジパング。もし今も生きているとしたら、そこにパープルオーブがあるかもしれん」
ジパング……。そう言えば、昔お父さんに自分の名前の由来を尋ねたときに、ジパングという国の言葉で、それが一番綺麗で気に入ったから名付けたんだと聞いたことがある。
ということは、お父さんはジパングに行ったことがあるのだろうか。
「ジパング? 聞いたことのない名前だな。本当にそれは国なのか?」
「おそらく。詳しくはわしも知らん」
どうやらユウリも知らないくらい小さな国らしい。
私だけが知っているという小さな優越感に浸っていると、隣でルカが私を小突いてきた。
「なあ、オーブだかロープだか知んないけど、何の話してんの?」
「しっ! あとで船に戻ったら話すよ」
事情を知らないのだから無理もないが、ルカはルカで随分マイペースだ。
「ノルドさん。仲間の中に『フェリオ』という名の武闘家もいたそうですが、その人については何か知っていますか?」
ついでに師匠のことも聞いてみた。けれどノルドさんは首を傾げ、
「うーん、フェリオか……。あいつはもともと無口だったからな。正直そこまで深くかかわる関係でもなかったんだ。あいつが魔王軍の呪いを受けたあと、イエローオーブを持って皆と別れたことしかわからん」
「呪い!?」
その新事実に、私は思わず聞き返す。
「ネクロゴンドで魔王軍の襲撃に遭った時、あいつは魔物の攻撃によって自身の命が少しずつ削られていく呪いを受けたんだ。瀕死状態のアンジュをかばってな。幸いアンジュはイグノーの治療で回復はしたが、フェリオの呪いだけはどうしても解けなかったんだ」
「師匠が……命を削られる呪い……!?」
師匠がカザーブにやってきたとき、彼は「病にかかったから静養のためにここへやってきた」と、村の人たちに言っていた。当時子供だった私は詳しく聞いたわけではなかったが、魔物による呪いだなんて、村の人たちは一言もそんなことを言っていなかった
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