第2部
エジンベア
ノルドの過去
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に会った」
「イグノー!? まさか生きておったのか!?」
期待に満ちた目でユウリに詰め寄るノルドさん。けれどユウリはその期待を打ち砕くかのように、静かに横に振った。
「俺たちが会ったのは幽霊の方だ。すでにイグノーはテドンの町とともに魔王軍に襲撃されていた」
「そんな……」
ノルドさんの膝ががっくりと崩れ落ちる。この様子だと、イグノーさんの安否は今まで知らなかったのだろう。
「……期待させてしまってすまない」
「いや、もう二十年も前の話だ。覚悟はしていたつもりだった。だが、いざ事実を目の当たりにすると、理性が追い付かんな……」
ノルドさんの心情が、私たちにまで伝わってくる。かつての仲間がすでに亡くなっていたと知らされて、傷つかない人などいない。
「すまん。話を進めてくれ」
どこか無理やり吹っ切れた様子を見せながら、ノルドさんは言った。
「そのイグノーと関わりのある人からあんたのことを聞いた。レッドオーブを持っていると」
「!!」
「俺たちも今、魔王の城に向かうために、オーブを集めている。今はイグノーが持っていたグリーンオーブしか心当たりがないが、他にもあと五つあるんだろ?」
「あ、ああ……」
オーブのことを知っているにしては、妙に歯切れが悪い。その様子に、ユウリは若干イライラしながらなおも言い募る。
「サイモンの仲間はそれぞれ一つずつオーブを持って逃げたと聞いた。あんたも持ってるんだろ?」
その一言に、苦悶の顔を浮かべていたノルドさんはたまらず吐露した。
「すまん……! レッドオーブは、あんたの言うとおり、途中までは持っていたんだ! だが、船で逃げる最中、海賊船に襲われて、そのときにオーブも奪われてしまったんだ!」
「何だと!?」
ということは、今ノルドさんの手元には、レッドオーブはないってこと?
「あんた、サイモンの仲間だったんだろ? 海賊くらい一人で倒せるくらいの力はあったんじゃないのか?」
確かに、魔王軍から逃げられるくらいレベルが高かったのなら、海賊なんて敵ではないと思うのだが……。
「とんでもない。わしらホビット族は地上や土の下なら本来の力を発揮できるんだが、海の上だとどうもうまく体が動かなくてな。船酔いもひどかったし泳げないしで、大陸一つ渡るのに相当難儀したんだ」
「な、なるほど……」
自分も同じ泳げない者同士、その気持ちはわかる気がする。
一方船酔いに悩まされているユウリも、ノルドさんのその理由には納得せざるを得ないようだった。
「ふん。まあ、過ぎたことを今更言っても時間の無駄だからな。それで、海賊に奪われたということは、今もオーブは海賊が持っているのか?」
「さあな。そこまでわしは知らん。やつらの行方を追うという選択肢もあったが、当時はそれどころじゃなかったからな」
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