献身
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「これって……」
「怪しい宗教団体……ですね?」
紗夜がハルトに耳打ちした。
これ以上ここにいても仕方ない。このまま紗夜を連れて離れよう。
そう考えたハルトだったが、その前に司祭がハルトたちを呼び止めた。
「お待ちください。初めて見る顔ですね」
司祭がハルトたちに近づいてくる。人だかりが彼の動きに合わせて分かれていき、司祭をハルトの前に導いた。
「どうやら、中央の方のようだ。ようこそ、見滝原南へ」
「ど、どうも」
「こんにちは」
ハルトと紗夜も挨拶を返す。
「こんなところにお客様とは珍しい。我々は、新たな同胞を歓迎いたします」
司祭が両手を広げた。
すると、彼の周囲の人だかり___もう信者と呼ぶべきではないだろうか___は、一斉に祈りを捧げた。
一斉の動きを、ハルトは慌てて「違います」と言い止めた。
「俺たちは、別にここに移住しにきたわけじゃない……」
「おや。そうでしたか?」
司祭は残念そうに首を振った。どことなくうさん臭さを感じる声に、ハルトは身を強張らせる。
一方、紗夜は何故か誰とも目を合わせずに、顔を赤くしていた。
司祭は両手を広げた。
「しかし、ここは観光に来るような場所ではないと思いますが」
「あはは……えっと……紗夜さん、この人に一回聞いてみようか」
「そうですね。手がかりもありませんし」
紗夜の同意も取れた。
ハルトはスマホを操作して、蒼井晶の写真を映し出す。
「人を探しているんですけど……この子」
蒼井晶の写真。
人だかりも、多かれ少なかれハルトが見せた写真に目の色を変えた。
ただそれは、写真を見てというよりも、久しぶりに見たスマホという電子機器に目の色を変えたようだった。
「この子……蒼井晶のこと、どこにいるか知りませんか?」
「ふむ」
司祭は顎に手を当てた。
「是非ともお教えしましょう。我々が行うのは、他者への献身。それこそが、いずれ来る未曽有の災厄より、その魂を___」
御託は良いから、と言いたくなる気持ちをぐっとこらえて、ハルトは彼の次の言葉を待つ。
「蒼井晶。彼女の居場所は……」
ようやく。
司祭から、その場所のことが語られた。
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