第二部 1978年
ミンスクへ
華燭の典
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くれぬかね……。
ハリコフでの初陣の際、戦死した部下を思うて夜も寝れぬ日々を過ごした繊細な男だ……。
傍にあって、そっと支えてやって欲しい」
ユルゲンは、その一言を聞き入った
ウクライナ出兵の際、初陣で光線級吶喊をした際の話まで調べ上げているとは……
この男の底知れぬ深さに改めて喫驚する
彼女は相も変わらず仏頂面をして、男を見つめる
そして突然哄笑した
男は一瞬驚いた表情を見せると、笑みを浮かべた表情に変える
その様を見ていたユルゲンは、両人の真意を量りかねていた
奥に立っていた職員が近づき、何やら告げる
時間が来たと言う事で、議長が立ち去る
一礼をして見送ると、一旦部屋を後にした
疑問の氷解せぬまま、帰宅の途に就く二人
彼女が不意に言葉を発した
「来て、正解だったわ」
ユルゲンはその真意を訪ねた
「何だよ。それは……」
「貴方の出処進退で、議長が私に頼み込む……」
「詰り……」
「自信を持って前に進めることが出来る。
でなければ、議長が私を頼る事も無かっただろうから……
貴方はこの国にとってかけがえのない人材と言う事のお墨付きをもらったのよ」
その一言に衝撃を受ける
「貴方の傍にずっと居ることの覚悟も出来たし」
そう漏らすと、彼の胸に飛び込む
厚い胸板に顔を埋める様に抱き着く
彼も、そっと両腕を彼女の肩に回す
幾度も戦場に赴く際に静かに見送ってくれた彼女
今生の別れとなるかもしれぬのに涙一つ浮かべなかった
「決めたぞ。
近いうちに、盛大な婚礼の儀式を挙げる」
これからも彼女の艶やかな笑みを傍らで見続けたい
一時の安らぎではなく、家庭という心休まる場を持つ
淡い希望を現実にしたい……
彼の心の中に強い決意が固まった
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