第二部 1978年
ミンスクへ
華燭の典
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囲気を感じ取ったヤウクが止めに入る
「もう止めよう。こんな話は……」
興奮した彼は続ける
「あのな、ベアトリクスは気難しい所もある。
とんでもない我儘娘だけど、そういう所がまるで猫みたいで可愛いらしいじゃないか」
内面にある感情を開陳する
「勿論、彼女の美しい体つきも、俺の心を惑わさせる……。
それは、否定しない」
熱心に話し続ける彼は気が付かなかったが、向こうより黒髪の女が歩み寄ってくる
カッフェの表情が、忽ち青くなっていく
ヤウクは、近づく見知らぬ女の存在に、落ち着かない素振りを見せる
そうする内に、彼の後ろから可憐な女の声がした
「女の気持ちを蔑ろにする貴方にしては、気の利いた表現をした物ね」
ユルゲンの立ち位置より、半歩下がった所で立ち竦む
仏頂面をする若い女が彼の背後から反論したのだ
ヤウクは、波打った長い黒髪の美女を一瞥する
彼女に尋ねた
「失礼ですが、御嬢さん。
男同士の会話に水を差すのは、無粋ですな」
彼女は不敵の笑みを浮かべ、ヤウクに返す
「先程から話題の、アベール・ブレーメの娘よ」
然しものヤウクも肝を冷やした様で、蒼白になる
彼女は、その様を見るなり、破顔する
口に手を当てわざとらしく哄笑してみせた
「どう、吃驚したでしょ。ヤウクさん」
彼は、全身より血の気が引くのが判った
背筋に寒気を感じて、まるで冬の様な寒さを憶える
流石は、保安省に近いアベール・ブレーメの愛児
四六時中、保安省職員が護衛に付いていただけあって、何でも知っているのだと……
「ユルゲン……、次は承知しないからね。
解ったかしら」
縮こまって小さくなっている彼女の愛する男は、力なく応じる
「はい……」
右手を耳に当てて、再度問う
「声が小さくて、何も聞こえなかったわ」
彼は、力強く答える
まるで、最先任下士官に問われ、応じた新兵の様に
「はい!御嬢様」
彼女は微笑むと、こう返した
「宜しい」
彼の安堵した様を一瞥すると、止めの一撃というばかりに言い放つ
「是からは面白い話を仕入れたら私に教えなさい。
そうね……、現指導部を批判した、政治絡みの楽しい冗談が望ましいわね」
彼は、悲鳴を上げる
その様を見ていた同輩達は失笑した
ヤウクは、彼女に問い質す
「お嬢さん、護衛を引き連れて、大方僕達を監視にでも来たのかい。
何せ、伏魔殿の目と鼻の先だからね」
保安省に近い場所であった為か……
慎重に言葉を選んで、彼女の反応を伺う
宝玉のような瞳が彼の顔を覘く
静かに言い放つ
「御名答。
私の護衛は、日常生活を全て父に報告することになって
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