第十一幕その八
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「賑やかで人情があって」
「ずっとここにいたい位だよ」
こう言ったのは老馬です。
「本当にね」
「織田作さんが好きな理由もわかるよ」
「それも心から」
オシツオサレツの二つの頭にある目も笑っています。
「こんな素敵な街だから」
「愛しているんだね」
「全くだね、織田作さんこんにちは」
先生も微笑んで挨拶をしました。
「今日も来させてもらったよ」
「よお来たな」
ここで、でした。先生達の後ろからです。
男の人の声がしました、皆その声の方を振り向きますと。
あのマントに着流しと帽子を身に着けた面長で小さな目の男の人がいました、先生も皆もその人を見て思わず声をあげました。
「織田作さん!?」
「織田作さんだよね」
「まさか本当にいたんだ」
「今も」
「亡くなられても」
「それでも」
「そやで、私は確かに死んだけど」
その人、織田作之助さんは皆に笑顔で答えました。見れば影がありません。
「この通りな」
「幽霊になってもなんですね」
「大阪におって」
そしてとです、先生に答えました。
「今もやねん」
「大阪で暮らしておられますか」
「そやで、大阪が大好きで」
この街がというのです。
「大阪の人達もな」
「今もですね」
「大好きやねん」
こう先生に言うのでした。
「ほんまにな」
「そうですか」
「先生と皆は見てたから」
織田作さんは先生に笑顔でお話しました。
「私のことを調べてくれてるのは」
「織田作さんの作品にですね」
「私にな」
それにというのだ。
「大阪と大阪の人達も」
「そうでしたか」
「おおきに」
これも笑顔での言葉でした。
「大阪のことを学んでくれて」
「あれっ、勉強じゃないんだ」
「そこはそう言うんだ」
「確かに先生は学問が好きだけれど」
「ここで勉強するとは言わないんだね」
「勉強は商売でまけてもらう時によお使う言葉や」
織田作さんはその皆に笑顔で答えました。
「そのまけてもらうことで売る方も買う方も知るさかい」
「商売のことを」
「それでそう言うんだ」
「成程ね」
「面白い言葉だね」
「それで私も言うたんや」
今の様にというのです。
「学んでるって」
「成程な」
「そういうことだね」
「その言葉面白いね」
「関西の言葉だね」
「それも大阪の」
「そや、大阪やさかい」
それでというのです、織田作さんも。
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