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お骨
第一章
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                お骨
 介護職員の麻木果林長い黒髪を後ろで束ねたはっきりとした顔立ちで若々しさ満ちた外見の彼女は今先輩の三輪祥子に言われていた。祥子は黒髪を短くしている小柄で丸顔の女性である。身体は胸の
大きさが目立つ。
「ホームヘルパーのお仕事慣れた?」
「はい、何とか」 
 果林は助手席から車を運転する祥子に応えた。
「そうなってきました」
「それは何よりね」
「大変ですがやりがいがありますね」
「そうでしょ、それに私達の会社はお給料も厚生もいいしね」
「介護職って結構お給料安いところ多いですからね」
「重労働でお休みも少なくてね」
「何かと大変ですよね」
「だから離職者も多いけれどね」 
 それでもというのだ。
「うちの会社はね」
「お給料も多くて」
「それでお休みとか福利厚生もね」
「しっかりしていますね」
「だからね」
 それでというのだ。
「ちゃんとしているからね」
「頑張った分報われますね」
「だから安心して頑張ってね」
「わかりました」
「それでだけれど」
 ここで祥子は果林に話した。
「今日は貴女がはじめて行くお家ね」
「はい、神谷さんですね」
「お祖母さんが一人暮らしでね」
 それでというのだ。
「頭はしっかりしているけれどもう九十五歳でね」
「かなりのお歳ですね」
「あちこち弱っておられてね」
「何かと動けないんですね」
「それでホームヘルパーとしてなの」
「私達がお邪魔してですね」
「お手伝いをしてるのよ」
 そうしているというのだ。
「まだ家事は出来てるけれどね、歩けて」
「それでも弱っておられるんですね」
「九十五歳だからね」
 それだけの年齢だからだというのだ。
「それでなのよ」
「九十五歳になると」
「そうでしょ、ご高齢でね」
「中々動きにくくなりますね」
「どうしてもね、ただそれでも頭はしっかりしておられるから」
 ぼけてはいないというのだ。
「そこは安心してね」
「わかりました、それじゃあ」
「ええ、協和ね」
「神谷さんのお家で」
「頑張りましょう」
「わかりました」
 果林は祥子の言葉に頷いた、そうしてだった。
 今日の仕事に入ると清潔そうな家だった、出迎えてくれた老婆も足腰は弱っていそうであったが穏やかな雰囲気で実際に口調も物腰も穏やかであった。
 暖かく出迎えてくれて今日も宜しくお願いしますと祥子に挨拶をして。
 果林を見てだ、こう言ってきた。
「お姉さんははじめてですね」
「はい、こちらには」
 果林は白髪で皺だらけの顔の小柄な老婆に答えた。
「そうです」
「そうなんですね、宜しくお願いしますね」
「いえ、こちらこそ」
 果林は老婆、神谷千冬という彼女に礼儀正しく応えた。
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