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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第八十九話 余波(その5)
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奴だ、緊張感の欠片も無い表情をしている。ヤンといい、ヴァレンシュタインといいどうして俺の周りには変な奴が多いんだろう。しかも変な奴に限って出世している。何でだ?

「今、チュン少将と話をした。ヴァレンシュタインは巡航艦パルマに移ったそうだ。合流地点はポレビト星系付近、大体一週間後になるだろうな」
『なるほど、とりあえず一安心か』
ヤンが頷いている。

「まだまだ油断は出来んさ、奴が危険な状況にある事は間違いない」
『無事であって欲しいよ、間違ってもフェザーン本星への攻撃なんてしたくない……』
ヤンが顔を顰めた。そんな情けない声を出すなよ、こっちも滅入るだろう。

「俺も同感だ、それを考えると今すぐ辞表を書きたくなる。……ヤン、少し話せるか」
俺の問いかけにヤンはちょっと考える様なそぶりを見せた。

『……二人きりでかな』
「ああ、二人きりでだ」
『そうだね、私も君と話したいと思っていた』
「気が合うな、では決まりだ、こちらから連絡する」

話したいと思っていたか、考える事は同じだな。通信が切れスクリーンに何も映さなくなった。
「大尉、そういうわけだ。俺は暫くの間自室に居る。何かあったら遠慮なく連絡を入れてくれ」

俺の言葉にスールズカリッター大尉は“承知しました”と答えた。自室に戻るために艦橋を離れる。ヤンの言うとおりだな、フェザーン攻撃なんて冗談じゃない、現実になったらどうするべきか、未だに判断がつかない。攻撃できるんだろうか……。無差別に民間人を殺しまくる? 溜息が出た。

ヴァレンシュタインめ、全く碌でもない事を言いだす奴だ。部屋に戻りヤンを呼び出すと直ぐに通信が繋がった。珍しい事だ、奴は俺より先に部屋に着いて待っていたらしい。

「今回の件、どう思う?」
俺の問いかけにヤンが苦笑した。
『随分と抽象的な質問だね、ワイドボーン』
「思った事を言えということさ。で、どう思う?」
ヤンが髪の毛を掻き回した。

『そうだな、……まず偶然じゃない。フェザーン行は帝国軍を引き摺り出す為の謀略と言っていたが真の狙いはこっちだろう』
「同感だな、ところで地球の事はどう思う」
『ルビンスキーの様子を見れば事実という事だろうね。拝金主義者の裏の顔が狂信者か……。思ってもみなかったよ』
溜息交じりの言葉だ。

『国防委員長もシトレ元帥もそれについては知らなかったようだ。ヴァレンシュタイン中将は事前に説明はしなかったようだ』
「あいつの悪い癖だな、なんでも一人だ。肝心な事は周りには教えない」
俺の言葉にヤンが困ったような表情を見せた。

『まあ事前に説明しても受け入れられるとは思わなかったのかもしれないよ。それに説明すれば万一の場合二人にも累が及ぶ、そう考えた可能性も有る』
「そうかもしれない
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