第二部 1978年
ミンスクへ
シュミットの最期 その3
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自分が策謀に貶めようとして図った国家保安省
ドイツを核ミサイル基地に改造して 権力の独裁を企む
エーリヒ・シュミットの恐るべき野望。
しかし それは、その為の道具に使われると知った保安省幹部
多くの職員たちの離反を招く
無論、工作の中心にいた彼自身は知る由もなかった……
彼がその場から退こうとする間に、衛兵連隊の将兵に周囲を囲まれる
自動拳銃を持ち上げ、引き金を引く
早朝の森の中に、銃声が鳴り響く
一斉射撃が彼の体を貫くと、勢いよく倒れ込む
その際、被っていた軍帽は脱げ、白色の上着が徐々に赤く染まる
「この様な所で、夢破れようとは……」
そう呟き、再度銃を男に向ける
彼の反撃よりも早く、背後から銃弾が撃ち込まれる
盆の窪から二発の拳銃弾が脳へと放たれ、息絶えた
エーリヒ・シュミットの最期はあっけの無いものであった
KGB流の暗殺方法で最期を迎えた男の亡骸は、持ってきた携帯天幕に包まれる
止めの一撃を放った男は、地面に横たわる骸を見下ろす
この様に成るまで放っておいた我等も……責任があるのではなかろうか
外套のポケットよりタバコを出すと、火を点ける
何れ、権力機構を支えた国家保安省は解体されるであろう
そしてその暁には、公正な自由選挙が行われ、真の意味での民意を反映した政権が出来る
甘い夢かもしれない……
だが子や、まだ見ぬ子孫達に幾らかでも選択の余地を残してやる
それが、この国の政治を担う者としての立場ではないのか……
彼は、そう自問する
遺体を積み込むと、ヘリに乗り込み、その場から立ち去った
同じころのポツダムの国家人民軍参謀本部
其処では東ドイツの行く末をめぐって政治局員同士の議論がなされていた
「これはチャンスだよ、諸君」
「同志議長、どういう事ですか」
上座の男は、語り始める
「今回の事件の結果次第によっては独ソ関係は変わる。
仮にソ連の態度が今以上に冷たくなれば、我が国を……否、東欧を捨てたを意味する」
今回の事件を斟酌する
「先年の米国との取り決めを無視し、ハバロフスクに逃避して以来の衝撃だよ。
つまり、独自交渉の余地が出来上がったとも受け取れるという事さ」
国防相は、彼の言葉を聞いて背もたれに寄り掛かる
「事を構えるつもりだと……」
男は、真剣な面持ちでゆっくり語り始める
国防相の疑問を返した
「遅かれ、早かれケーニヒスベルクの帰属をはっきりしない限り、この欧州の地でのソ連の潜在的な脅威は取り除けない……。
歴史を紐解けば、かのキエフ公国以来、異常とも言える領土的野心……。
それを、彼等は一度も捨てた事は無い。
放置すれば、あの忌々しいナチスのダンチヒの二の舞になる。
新たな火種を置いておく必要は無かろう
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