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渦巻く滄海 紅き空 【下】
五十八 断たれる命脈
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もなく此方で合流する。
今頃、飛段を引き連れているだろう影分身に任せたナルトは了承を返した再不斬と白を認めると、手元へ視線を落とす。
今し方消えた影分身から受け取った面…角都の【地怨虞】の分裂体の能面を確認すると、ナルトは冗談にも取れる言葉を口にした。


「早くしないと心臓が腐ってしまうんでな」



角都の胸を穿ち、抉り取った心臓を平然と手にしながら、ナルトは微笑む。
穏やかな笑顔の反面、血の滴る心臓を握りしめているその光景は、さながら地獄の天使のようだった。

















「サソリ。お前は俺に借りがあるだろう」
「藪から棒になんだ。ご挨拶だな」


突然、背後から掛けられた言葉に一瞬息を呑む。
音も気配もなく後ろを取られたことに恐怖を抱くも、ナルトならさもありなん、と己を納得させてサソリは平然とした態度を装った。
第一、今はデイダラに絡まれてうんざりしていたところだ。ナルトの登場は逆に救いと言える。

傀儡作りの邪魔をしていたデイダラがナルトの姿を認めて、顔を輝かせた。
すぐにナルトのもとへ向かおうとするデイダラを押しのけたサソリは、ナルトの手元にある心臓を見遣って眼を瞬かせる。


「そいつは…」
「角都だ」


間髪を容れずに返ってきた答えに、サソリとデイダラが目を点にする。
やがて「こ、コレが角都ぅ!?」と爆笑するデイダラの隣で、サソリは煩そうに耳を押さえた。


「あ、あの図体ばかりデカかった角都がこんなコンパクトになっちまって…ッ、うんっ」
「お前、角都に聞かれたら殺されるぞ」
「そうだな、殺されるな」


膝を叩いて笑い転げるデイダラを呆れ顔で見ていたサソリは、ナルトの発言に反応すると、軽く片眉を上げる。


「今は体躯が無いからな」
「…なるほど。そういうことか」


確かにナルトには何度も世話になっている。
特に最近では木ノ葉の忍び及び、チヨ婆と対峙した際に死ぬはずだった自分の命を救われている。

どんな無理難題を押し付けられるのか、と身構えていたサソリは角都の心臓と、【地怨虞】の分裂体の能面を交互に見遣ると、愉快げに口角を吊り上げた。

「面白ぇじゃねぇか」

ナルトの望みを察したサソリは「待っていろ」と、ナルトと角都の心臓に背を向ける。
芸術家として、そしてなにより傀儡師としての血が騒いだ赤砂のサソリは、肩越しに振り返ると唇に弧を描いてみせた。


「上等な人形をくれてやる」















「流石、その手腕は衰えていないな」

赤砂のサソリ。
砂隠れの天才造形師の見事な仕事ぶりに、ナルトは惜しみない称賛を送った。


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