第一章
[2]次話
どんな誕生日も特別
ある小学校で一年生を受け持っている成海香織は職員室の自分の席で自分が受け持っている児童達の誕生日を確認して思わず声をあげた。黒髪をショートにしていて目はアーモンド形で眼鏡をかけた鼻の高い色白の外見で背は一六六位で中々のスタイルだ。三十になったばかりで結婚して三歳になる男の子が一人いる。
「あら、後藤さん桜桃忌生まれなのね」
「桜桃忌って太宰治の」
「ええ、あの人が亡くなった日よ」
隣の若い教師大野翠に話した、翠は薄茶色のおかっぱの髪の毛のおだやかな顔立ちの小柄な教師になって一年目の二十三歳の女性である。
「六月十三日よ」
「その日生まれですか」
「ええ、それで佐伯さんは七月四日よ」
「その日はアメリカの独立記念日でしたね」
翠が言ってきた。
「そうでしたね」
「その日よ、他にも節分の日に生まれた子や終戦記念日に生まれた人もいるわ」
「色々な誕生日の子がいるんですね」
翠は香織の話を聞いて言った。
「成海先生のクラスは」
「そうね、かく言う私は十月十九日生まれなのよ」
「その日何かあったんですか?」
「近鉄バファローズがすんでのところで優勝逃した日よ」
「近鉄ってあのなくなった野球チームですか」
「ええ、お祖父ちゃんがファンで私にそう言ったの」
「成海先生もなんですね」
翠は感心した様に言った。
「特別な日に生まれたんですね」
「特別かどうかはわからないけれどそうした日に生まれたのよ」
翠は笑って話した、この時はこれで終わったが。
ある日クラスの児童の一人北条弓香、黒髪を長く伸ばしていて大きな穏やかな目をしている彼女に言われた。
「先生、私お姉ちゃんとお誕生日交換したいんですが」
「あら、どうしてそんなこと言うの?」
それは無理と応えずにだ、香織は屈んで弓香に視線を合わせて優しい顔と声で尋ねた。
「何かあったの?」
「お姉ちゃん七月七日生まれなんです」
「七夕の日ね」
「けれど私は九月二十日生まれで」
その日でというのだ。
「何もないですから」
「あら、あったわよ」
香織は即座に笑顔で答えた。
「北条さんのお誕生日もね」
「何があったんですか?」
「アメリカで科学振興協会が出来た日よ」
「アメリカで、ですか」
「そう、世の中がよくなることにとても頑張ってくれるところが出来たの」
子供にわかりやすく話した。
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