第2部
エジンベア
最終審査の真実
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なってしまった代わりに、出場者および観覧者、また関係者に多額の補償金を渡そうと思う」
「……確かに、そこまでしなければ、今後信用を回復するには難しいでしょうね」
ユウリも納得した様子で頷いた。
「今までヘレンを散々甘やかしてしまったわしにも責任はある。むしろ一番の被害者は娘の方かもしれぬな」
そこまで言うと、王様は沈痛な面持ちで項垂れた。でも、もとはといえばこの国を襲った魔物が原因なのだ。許されないのは魔物の方なのに、なんだかやり切れない思いだ。
「あ、あの! 差し出がましいことを言いますが、きっとエジンベアの人たちは、許してくれると思います。だって、王様と王妃様がこんなにも国民のことを思ってくれてるんですもの。それに、ヘレン王女をこんなにも愛しているお二人のお人柄は、きっと皆わかってくれると思うんです」
「そなたは……。娘を恨んではおらぬのか? せっかくのそなたの晴れの舞台を、台無しにしたのだぞ?」
静かに問いかける王様を、私は真っ直ぐに見据える。
「王女様は、ユウリのことが好きだから、周りが見えなくなってしまわれたんです。誰かを好きになる人を恨む理由なんてありません。だから、もし皆に伝えるとしたら、王女様の気持ちも正直に伝えた方がいいと思います」
「……」
はっ、しまった! つい調子に乗って随分ベラベラと好き勝手なことを言ってしまった! 王様を怒らせてしまったんじゃ……、そう思って私が身構えていると、
「……ありがとう。そなたの言うとおり、娘の気持ちも蔑ろにしてはいけないな。そなたのその言葉が、我々家族にとって、唯一の救いだ」
そう言って王様と王妃様は玉座から立ち上がり、私に向かってお辞儀をしたではないか。
「かっ、顔を上げてください!! こんな、田舎者の私なんかに……」
「こらこら、そういうことは自分で言わないの」
小声でアルヴィスが私に釘を刺す。そうは言っても、まさか王様に頭を下げられるなんて一体誰が予想できただろうか。
「しかし言葉だけでは感謝の意を伝えることは出来ぬな。魔物を倒してくれたことも含め、是非何か礼をさせてはもらえぬか?」
「え!? えっと……」
お礼……。と、急に言われても……。
すると、今まで黙っていたユウリが口を挟んできた。
「でしたら、一つ欲しいものがあるのですが、よろしいでしょうか?」
「構わぬ。欲しいものがあるのなら、何でも言ってみよ」
「以前もお話しましたが、我々は魔王の城に向かうため、こちらの地下にあるという『渇きの壺』がどうしても必要なのです。どうかお譲りしていただくことはできませんか?」
あっ、そうだった! 危うく「特にありません」と言うところだった。
「ふむ……。『渇きの壺』か……。ううむ、手放すには少々惜しいが、他ならぬそなたらの頼みだ。わかった、
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