第2部
エジンベア
最終審査の真実
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。私や妻にとってはかけがえのない唯一無二の宝なのだ。もし失ってしまったらと思うだけで、身を引き裂かれるほどの心中であった」
すると王様は、私の方を向いて優しく笑った。
「そなたのおかげだ。ありがとう」
「あっ、こっ、こちらこそ、もったいないお言葉です」
急にお礼を言われたものだから、頭が真っ白になって変な言葉遣いになってしまった。
「そう固くなるな。コンテストは中止となってしまったが、皆が無事でよかった」
やっぱり中止になってしまったようだ。でも、被害が最小限に抑えられただけでもよかった。
すると、何か言いたそうにユウリが一歩前に出る。
「差し出がましいようですが、少しお伺いしてもよろしいでしょうか?」
「構わぬ。申してみよ」
王様は特に気を悪くすることなく、ユウリの話に耳を傾ける。
「この国には魔物避けの聖水の力で魔物からの脅威を防いでいたようですが、一ヶ所だけ聖水の力が失われた場所がありました。その原因については、調査されましたか?」
「あ、ああ……、そうだな。したことはしたのだがな……」
何とも歯切れの悪い物言いに、訝しげな顔をするユウリ。
「国の危機に関わることだと思われますので、もし調査に難航しているのでしたら、微力ながらお力添えさせていただきます」
「あ、ああ……」
そう言ってユウリは恭しく一礼する。だが、ここまで言われても、王様は何かを躊躇っているのか、口をもごもご動かすのみ。
「あなた。無関係でないのですから、ここは正直にお話した方がよろしいですわ」
すると隣に座っていた王妃様が、そっと王様に話しかける。やがて王様は決意したのか、再びユウリに向き直った。
「う、うむ。そうだな。実はその件だが、実は我が城の者が聖水の効力を消してしまったそうだ」
「どういうことですか?」
ユウリだけでなく、王様と王妃様以外の全員が眉をひそめる。
「正確に言うと、コンテストの関係者だ。最終審査の迷路に使う障害物を準備するときに、誤って本物の岩を用意したそうだ」
「えっ!?」
それって、私のところにあった大岩だよね? やっぱりあの岩が置いてあったのは間違ってたんだ。
「しかもその岩は、町外れの森からわざわざ持ってきたらしい。最終審査が始まる前に急いで持ってきた、と関係者が証言している」
あとで聞いた話によると、王様の言うとおり、予選が終わり、最終審査が始まる前に上からの指示があり、急遽張りぼての岩と本物を取り替えることになった。だが、城の敷地内にそう都合よく大きな岩なんてない。そんな中、コンテスト関係者の一人が街の外にならあるのではないかと言い、できる限り人を集めて代わりになる岩を探した。そしてちょうどいい岩を見つけ、皆でコンテスト会場まで押しながら運んだ。その際、聖水が撒かれたところも引きず
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