失敗魔法
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「眠……」
カウンターにもたれかかかりながら、ハルトはそう呟いた。
結局可奈美にせがまれて、朝からこの時間までランニングをすることになった。
徹夜で指輪制作なんてするんじゃなかったかなと後悔しながら、ハルトは入口を見つめた。
シフトに入ってから数時間たっているが、客が入ってくる様子が全くない。
「可奈美ちゃんも掃除から戻ってこないし……カフェインでも取るか?」
ハルトは蛇口をひねり、顔を洗う。だが、すでに限界を超えた眠気をおさえることはできなかった。
即興でコーヒーを淹れ、がぶ飲みする。だが。
「ダメだ、カフェインじゃ眠気が治まらない……! そうだ、だったら手入れだ手入れ」
ハルトは口走りながら、腰のホルスターに収まっている指輪に手を触れる。手慣れた手つきでルビーの指輪を取り出し、
「えっと、コネクトコネクト……」
カウンターにルビーの指輪を置いて、別の指輪を取り出した。眠さで数回頭を揺らしたものの、意地で堪えて指輪をベルトにかざした。
これで、いつも通り作られた魔法陣を二階の個室につなげ、指輪の手入れ用具一式を取り出そうとしたものの……
『スメル プリーズ』
「へ?」
予期していたものと全くことなる音声に、ハルトの目が点になる。
だが、読み込んだベルトは、指輪に組み込まれた術式を展開。ハルトの目の前に、見知らぬ魔法陣が発生する。
「ちょ、ちょっと待って! これってゴーレムとセットで作った奴じゃ……ハッ!」
___はい、可奈美ちゃん。そっちの指輪も、返して___
___ああっ……___
「あのあと片付けてなかった……ゲホッゲホッ!」
魔法陣がハルトを包むと同時に、異臭がハルトの体に張り付いた。
「う、嘘だろ!? って、本当にこれキツッ……! この指輪、何に役に立つんだ!?」
アクシデントで初めて使った指輪を睨みながら、ハルトは慌てて他の指輪を取り出す。
「あ、あった! こういう時の……」
『ドライバーオン プリーズ』
ハルトが手の形をした指輪を翳す。すると、ハルトが腰に巻いているベルトの上に、さらに銀のベルトが装着された。バックル部分を強調する作りとなっており、手の形をしたバックルは、ベルトの両端のつまみを操作することで左右に向きを変えていく。
『シャバドゥビダッチヘンシーン シャバドゥビダッチヘンシーン』
「変身!」
『ウォーター プリーズ スイ〜スイ〜スイ〜スイ〜』
カウンターの奥に立ったまま、ハルトは水のウィザードへ変身した。
カウンターに充満していく臭気を取り除くため、今度こそコネクトリングを取り出し、使用する。
『コネクト プリーズ』
手入れキットよりもウィザーソード
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