第2部
エジンベア
美少女コンテスト最終審査・後編
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一陣の風とともに私たちの前に現れたのは、箒にまたがって飛んできた老婆だった。いや、老婆といっても、ただの老婆ではない。真っ黒なつば広の帽子の下から覗く大きくてぎょろりとした金色の目玉は、まるで獲物を見つけた野生の獣のようにぎらぎらと光っており、帽子と同じ色をしたローブの下から見えるのは、枯れ枝のようにひび割れた皮膚だ。さらに、髪の毛が風にたなびいているかと思いきや、まるで蛇のように自分の意思で蠢いている。それはもはや人間と呼べる存在とは思えない。しいて言えば『魔女』と呼ぶにふさわしかった。
そんな魔女のような姿をした『そいつ』は私たちに目を留めると、耳まで裂けそうなほど大きな口を開けてニヤリと笑った。
『ヒヒッ……。うまそうな人間どもだ……』
「っ!?」
――私は思わず瞠目する。どう見ても人間とは思えない姿にも関わらず、『そいつ』は人の言葉を話している。
『その驚きよう……。さては、人語を話す魔物に遭うのは初めてか?』
「や……やっぱり魔物なの?」
私が恐る恐る尋ねると、魔物はしわがれた声で高らかに笑った。
『……ヒヒヒッ! 魔王軍麾下であるこのわしを怖れずに尋ねるとは肝の座った小娘よ』
「魔王軍!?」
魔王軍という言葉は、カリーナさんから一度耳にしている。確か魔王が復活した直後にテドンを滅ぼし、勇者サイモン一行を襲った魔物の軍勢だ。魔王軍麾下ということは、この魔物はテドンやサイモンさんたちを襲った奴らの手下ということなのだろうか。
『それより、わざわざそちらの方から門を開けてくれて、お前たち人間には感謝しているぞ』
「ど、どういうこと?」
だが今はこの魔物の素性より、今言った話の方が引っかかる。こっちから門を開けたって言うのは、一体なんのことだろう。
「どうもこうも、ずっとお前たち人間どもが閉ざしていた森へと続く城の門を、自ら開いてくれたのだろう? お陰でようやく人間どものいる場所へと入ることが出来た。礼を言うぞ」
城の門を開けた? 一体何の話?
「誰がそんなことを……!?」
と、ふとヘレン王女の方を振り向くと、彼女はぶんぶんと両手を振った。
「わっ、わたくしが来たときはもう門は開いてましたわ!!」
確かに、いくら魔物のいる場所から逃げ出したいからって、わざわざ閉じている城門を開けてまで外に出ようとは思わない。そもそも人間が、自分の身を犠牲にしてまで魔物を城に送り込もうとするんてありえない。
そんなやりとりをしている間も、魔物はこちらを吟味するように薄気味悪い笑みを浮かべている。
『お陰で血に飢えたわしの仲間どもも喜んで城に入っていったよ。ヒヒヒッ!!』
そう言ってひきつるような笑い声を放つ魔物に対し、私はかつてないほどの戦慄を覚えながらも臨戦態勢に入る。
「ここから先は通さない!!」
私
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