第二章
[8]前話
「その広さに慣れていたからな」
「一軒家だとか」
「広過ぎてか」
「困ってるか」
「ああ、けれど姉ちゃんが言うにはな」
姉に言われたことも話した。
「本当にな」
「空き家にするよりいいんだな」
「それよりも」
「誰か暮らしていた方が」
「何か空き家だと家が寂れてな」
そうなってというのだ。
「荒れるらしいからな」
「そのままじゃないんだな」
「空き家にしてても」
「それでも」
「そう言ってるからな、その辺りわからないけれどな」
それでもと言うのだった。
「家賃いらないし会社から近いしな」
「いいか」
「その家で暮らしてるんだな」
「そうしているんだな」
「姉ちゃん夫婦がオーストラリアに行っている間な」
ぼやきつつも姉が言うならとなってだ。
その家で暮らしていった、そして二年経ってだった。
姉夫婦が帰ってきて迎えると姉は笑顔で言った。尚晃はもう新たに住む部屋を見付けて引っ越し用芋終えていた。
「よかったわ、寂れてもないし荒れてないわね」
「ちらかってるけれどな」
自分で言った通り晃はまともに掃除しなかった、まさに男の一人暮らしといった有様になっていた。
「いいんだな」
「だから荒れてるよりもね」
「ちらかってる方がか」
「いいのよ」
こう言うのだった。
「じゃあ大掃除するからあんたも手伝ってね」
「いやあ、やっぱり人が住んでいると違うね」
姉の夫、晃から見て義兄にあたる明信も言ってきた、丸い目で少し尖った口の一七七位の背の少し骨太な感じの体格の男性である、黒髪を清潔に整えている。
「晃君お疲れ様」
「いえ、俺いただけですから」
「妻も言ってるね、いるだけでね」
「充分ですか」
「そうなんだよ」
「そんなもんですかね」
晃は二人が言っていることがわからなかった、空き家でも住んでいても変わらないのではないかと思った。
だが後日彼が結婚してだった。
家を買った時にわかった、その家は一年空き家だったが。
随分荒れていた、そこで人が住んでいない家がどうなるかわかったのだった。
長い留守番 完
2022・3・18
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