新しい使い魔
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「よし……! できた……!」
春の朝。
青年は、その出来にゆったりと背もたれに体を預けた。
手元にある指輪。
紫の石を型に埋め込んだ形式のそれを、青年は満足そうに眺める。
紫の指輪を置き、合計二個の新たな指輪が青年を見返す。出来前に満足しながら、青年は座ったまま伸びる。
「もう朝か……徹夜したかな……ふぁあ」
青年は大きく欠伸をしながら、部屋を見渡す。
狭く質素だが、過ごすには申し分ない部屋。
ラビットハウスという店、その従業員専用の部屋。その店名に違わぬウサギ小屋のような狭さだが、青年、松菜ハルトには全く不満はなかった。
今日の仕事は午後から。つまるところ午前中は休みである。ハルトは備え付けのベッドで横になり、ひと眠りしようとしていると。
「ハルトさん! おっはようございま〜す!」
と、元気声とともにドアが開けられた。
「うわっ!」
いざこれより心地よい眠りへと思ったハルトは、そのいきなりの音量にベッドから転げ落ちる。
「な、何!?」
一瞬だけ眠気が冷めたハルトは、また瞼が重くなる。
「か、可奈美ちゃん?」
「おっはよーハルトさん。いい朝だよ?」
少女ながら、年上の男性であるハルトに躊躇いなく顔を近づけてくる。
彼女が剣術大好き少女、衛藤可奈美だということは、もう何も意識しなくても判別できる。
「ひょうはひゅっふひ……」
ハルトは欠伸交じりに応える。
それに対し、可奈美は「え? 何?」と首を傾げた。
「今日はゆっくり休ませてよ。指輪作りのために、寝てないんだ」
「指輪?」
ハルトは、机の上に指を刺した。
すると可奈美は、机の上に置いてある紫の指輪を掴み取った。
「うわあ! 新しい指輪だ! 二つも作ったんだね。これ、どんな魔法が使えるの?」
「さあね。まあ、試すのは後。今はとにかくシフトの時間まで眠らせて……」
「えいっ!」
「だから今やめて!」
だが、ハルトの言うことを聞かず、可奈美はすでに指輪を右手中指に装着。躊躇なくハルトの腰に付いているバックルに当てた。
魔法の指輪、ウィザードリング。
松菜ハルトが、魔法石より作り上げる指輪は、ベルトを経由したハルトの魔力に反応。その能力を引き出した。
『ゴーレム プリーズ』
「「ゴーレム?」」
ハルトと可奈美は、同時に首を傾げた。
すぐさま、二人の答えは目の前に現れる。
紫のプラスチックのような質感をもつ、魔力でできたそれ。ランナーから自動で分離、指定されたものを形作っていく。
やがてできた、それは。
「……ゴリラ?」
「いや、ベルトがゴーレムって言ってたから。ゴーレムだよ」
可
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