第二十章 万延子と文前久子
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確かに、自分でいうだけはある。
自画自賛も納得の、とてつもない強さであった。
こちらは複数人おり、しかも一斉に挑んでいる。
なのに、それをものともしないばかりか、こちらを圧倒しているのだから。
康永保江、全身黒く、側面に青ラインの入った、スカートタイプの魔道着。
リヒトの、特務隊だ。
彼女は、息一つ乱さず、短剣を構えたまま立っている。
小馬鹿にした笑みを、口元に浮かべている。
対峙するカズミと万延子は、力なく肩を落として、はあはあ息を切らせている。
頭を支えるのも辛いのか、首が下がっている。
なんとか頑張って、足をよろめかせながら、睨んでいる。
目の前に、涼しい顔で立っている魔法使いを、険しい形相で。
背後から声。
「負け、られんわ。こがいなとこで……フミを、必ず……」
「そう、だね」
カズミたちに守られるように倒れていた、明木治奈と嘉嶋祥子が、床に両手を着いて、上体を起こした。
生まれたばかりの子鹿より頼りなく膝を震わせながら、立ち上がった。
二人は、延子とカズミの横に並んだ。
カズミは横目で、治奈たちが武器を構えたのを確認すると、自分も両手のナイフを構え直し、
「行くぜえ!」
叫び、
身を低く、
強く、床を蹴った。
その両翼、嘉嶋祥子が、そして万延子が、黒スカートの魔法使い康永保江へと、飛び込む、と見せて、高く跳んでいた。
ぶんっ、
後ろに隠れていた治奈の槍、穂先が風を突き抜けて、そして康永保江の胸を深々貫いていた。
と見えたのは、残像か。
黒い魔法使い、康永保江もまた、跳んでいたのである。
跳び、空中で、腰を回す。
祥子の身体へと、空中であるというのに様々な物理法則を無視して重たい蹴り放っていた。
ぐしゃり、音。
反動力を利用して方向転換、青の魔道着カズミへと迫りながら、剣を振り下ろした。
奇襲失敗どころか、迅速迅雷冷静的確な対応をされ、
く、
と呻き、焦りに頬を引つらせるカズミ。
なんとか反応し、左右の手に持ったナイフを交差させて、身を守るのが精一杯であったが、その精一杯すら実行出来なかった。
力押しで、ガードを弾き上げられていたのである。
そして無防備になったカズミの腹へと、黒い靴が、深くめり込んでいた。
黒スカートの魔法使い、康永保江の、回し蹴りが綺麗に決まったのである。
身は空中であるという
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