第二部 1978年
ミンスクへ
国都敗れる
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保安省の衛兵連隊に対して、ソ連の警備兵は着剣した自動小銃を向ける
白刃を見せつける様にして周囲を伺う
アスクマンは、万が一の事を考えて、ボディーアーマーを受け取る
20キロ近い保護具を、メルトンのオーバーコートの下に着る
肩に重量が架かり、動き辛いが、無いよりはマシであろう……
米軍の最新医療設備が利用できるなら、最悪助かるかもしれないが、新型弾の威力は未知数だ
まざまざと感じる死の恐怖……
喉が渇き、不感蒸泄で全身が湿らせるのが判る
彼は、近くの兵より水筒を受け取ると、忽ちの内に飲み干す
拳銃の弾薬数を数え、若しもの事態に備える
近くに居た連隊長が、彼に問う
「同志アスクマン少佐、大丈夫ですか」
体が震えているのが判る
「君、武者震いだよ」
食指をソ連大使館の方角に向ける
「あの者たちに、対応せねばなるまい」
その行動が、仇となった
銃声が響き、男が勢いよく倒れる
「同志少佐!」
勤務服姿の男が勢い良く地面にぶつかる
唸り声が、響き、周囲の兵は自動小銃に弾倉を差し込む
「救急車を呼べい」
連隊長は叫んだ
ソ連兵は混乱状態であった
建屋内での爆発と銃声……、一向に来ない上官の指示
其処に保安省少佐が表れ、指で自分達を指した
攻撃の合図かもしれない
そう勘違いした衛兵は、咄嗟に銃を撃ってしまったのだ
恐怖にかられたソ連兵が一斉に銃火を開く
全自動で連射し、周囲の動く物を打ち始めた
通りを行きかう自家用車や、アスクマンを救護しに来た救急車を狙い撃つ
人民警察と保安省職員は、自衛の為に自動火器を用いて応戦する
交通警察は、ソ連大使館に通じる道路をすべて封鎖した
共和国宮殿の前を、戦車隊が通り抜ける
宮殿の窓より、国籍表示のないT-55を議長は目視すると、事態の深刻さを理解した
「アーベル、此奴は飛んでも無い事になったぞ。
連中は恥知らずにも、市中で戦争をおっ始めるつもりだ」
タバコを吹かす彼の脇で、腕を組んで立つ男
アーベル・ブレーメは、眼鏡越しに外の様子を見る
偶々、通産官僚として議長に講義をしている時、事件に遭遇
彼の脳裏に1953年のベルリン暴動や、1961年のチェックポイント・チャーリーでの出来事が思い起こされる
「お前さん、坊主が気になるかい」
右の食指と中指に両切りタバコを挟み、話しかける男
彼は無言の侭、男の横顔を見る
「俺もだよ」
男は、両切りタバコを口に挟む
両手で覆う様にして、ライターで火を点ける
「常々、聞きたいと思っていたが……」
ゆっくりと紫煙を燻らさせる
「言えよ。俺とお前さんの仲であろう。
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