第17話 炎の忍者
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は、破壊されたままのパワーアームを振り上げていた。
そんな彼女の姿に、仮面の下で口元を歪めながら。マティーニは、ベルトのボトル部分を捻る。そこから右足に伝播していくエネルギーが、禍々しい真紅の電光を纏ったのはその直後だった。
「……!」
「そうでなければ……我々が生まれて来た意味など、この世のどこにも在りはしないのですからッ!」
そして、パワーアームの砕けた刃が、マティーニに届こうとした瞬間。赤と黒の怪人は、振り向きざまに右足での回し蹴りを放っていた。
生存本能に突き動かされたライダーマンGの肢体は咄嗟に「回避」を選び、巨乳を揺らしてくの字に仰反る。だが、それだけでかわし切るには、あまりにも近付き過ぎていた。
「がッ……!」
真紅の電光を帯びて放たれた、必殺の回し蹴り。その蹴りは、爪先が僅かに仮面を掠めただけで――ライダーマンGのマスクを吹き飛ばしていたのである。
仮面ライダーマティーニが、全身のエネルギーを右足に集中させて放つ「スワリング電光ライダーキック」。その一閃は、直撃さえすれば確実に死を齎す文字通りの「必殺技」なのだ。
(……避けた、のにッ……!)
ライダーマンGとしての意匠を失った番場遥花の身体が、衝撃の余波で宙にふわりと舞い上げられた。その瞬間に零した悔し涙を最後に、彼女の意識が途切れてしまう。
そのまま力無く地面に墜落した彼女の艶かしい肉体は、失神に伴いビクビクと痙攣していた。白目を剥いて昏倒している彼女の精神は今、深い闇の底へと突き落とされている。
「……ほうら、ご覧なさい。どんなお題目を掲げようが、力無き正義は無力なのですよ! 正義無き力は暴力? そんなものは弱者が己を保つために捏造した戯言!」
そんな彼女をはじめとする、「人間」でありながら「仮面ライダー」であろうとする者達は皆、マティーニという「正義無き暴力」の前に倒れ伏していた。彼らを冷酷に見下ろすノバシェードの首領格は、人類の奮闘を嘲笑うかのように哄笑する。
「力を以て己という正義を実現する我らノバシェードには、人間共の理屈など通用しないのですよ! 法も倫理も、我々をいたぶるためのものでしかないのであれば……我々の世界に、そのようなものは要らないのですッ!」
誰にも救われなかったが故に、外法の世界に希望を見出すしかなかった者達。そんな闇に生きる人々を率いて来た、ノバシェードの筆頭として。マティーニは大仰に両手を広げ、高らかに叫ぶ。
どのような正論を並べ立てようと、やはり最後に立っていた者こそが勝者にして正義なのだと、知らしめるかのように。
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