第二部
第一章 〜暗雲〜
九十 〜秘め事〜
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減にせぬか」
「そ、そうですよ、飛燕さま」
祭と明命の言葉にも、飛燕はただ頭を振るばかり。
「……飛燕。どうしても殿に何かの処罰をしていただかねば気が済まぬのだな?」
「そうです」
「それが、どんな罰であっても甘んじて受けるのだな?」
「……死以外の事であれば。私はまだ、死ぬ訳にはいきませんから」
「わかった」
そう言うと、彩は私に近づいた。
「殿。お耳を拝借」
「うむ」
顔を寄せ、私に囁く。
「……という事で如何でしょうか?」
「わかった。飛燕」
「……はい」
頭を下げたままの飛燕は、短く答えた。
「私に食事を馳走せよ。無論、お前の手料理でだ」
「え? ええっ!」
慌てて頭を上げ、飛燕は彩を睨んだ。
「彩! あなた、何という事を!」
「おや? 武人が二言か?」
「そ、そうではありません! ただ、何故料理なのですっ!」
「どんな罰でも受ける、そう言ったのは飛燕だぞ? そうですな、殿」
「うむ。ああ、ただし条件がある」
「な、何でしょうか?」
動揺のあまり、飛燕の視線は宙を泳いでいる。
「彩、祭、そして疾風(徐晃)らが認めた品である事だ」
「そ、そんな無茶です! 彩や祭様が料理上手である事は歳三様もご存じでしょう?」
「言った筈だぞ、これは罰だと」
「…………」
「期限は設けぬ。次に雪蓮らと会う時で構わぬ」
「……わかりました。お受け致します」
彩の話では、飛燕の最大の欠点が料理らしい。
一口食べただけでも、七転八倒する程と言うが……逆に想像もつかぬ。
飛燕当人にしてみれば厳しい罰やも知れぬが、恐らくはこれが今下せる最良の判断であろう。
翌日。
三将に率いられた睡蓮軍が、揚州へと出立した。
「歳殿。いろいろと世話になった、この通りじゃ」
「いや。これからが正念場であろう、雪蓮をしっかりと支えてやってくれ」
「うむ」
祭は頷くと、馬上の人となる。
「そう言えば祭。話が途中であったが、続きを言わずとも良いのか?」
「そ、その事ならば。ま、また改めてで良い」
顔を赤くしながら、捲し立てるように言う祭。
「……そうか。飛燕、楽しみにしておるぞ」
「う……。歳三様はやはり鬼です」
……何故にそうなる。
その様子を見て、睡蓮の兵らは一様に苦笑する。
どうやら、孫家の中では有名な事だったらしい。
「歳三さま。またお目にかかる事になると思いますが」
「ああ、疾風と連絡を取る事も増えよう。戦は情報が命、お前の役目は重いぞ?」
「はい!」
飛燕と明命も馬に跨がる。
「では、出立!」
「応!」
粛々と、睡蓮軍は城門を出て行く。
入れ替わるように、私の傍に気配が忍び寄る。
「祭殿ら、行きましたか」
「疾風か。ご苦労であった」
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