第二部
第一章 〜暗雲〜
九十 〜秘め事〜
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のだ、飛燕?」
「なんれもありませんよ〜。祭様がいないから、一人で飲んでいたらけれす!」
「……どういう事なのだ、祭?」
「い、いや。儂にもさっぱり……これ、しっかりせぬか」
足下が覚束ず、蹌踉めく飛燕。
「危ない!」
思わず、その身体を支えた。
「うふふ〜、歳三様はお優しいのれすね〜?」
「飛燕。本当にどうかしているぞ」
「い〜え、ろうもしてませんよ〜。んふふ〜」
「むっ?」
飛燕が抱きついてきたかと思いきや、いきなり口づけされた。
唇を割り、舌がねじ込まれてくる。
「な、な、な……」
あまりの事に、祭が固まっているようだ。
私もとりあえず引き剥がそうとするが……びくともせぬ。
「む、むぐぐぐ……」
「んふ……んんっ」
これでは、息が続かぬ。
が、飛燕はお構いなしにますます力を込めてくる。
「は、はぅぁっ? ひ、飛燕さま!」
「飛燕! 何をやっているのだお前は!」
明命と彩が飛び込んできて、漸く飛燕は身体を離す。
ふう、やっとまともに息が出来る。
「らってぇ、彩が女らしくなって羨ましいのれすよ〜? なら、私だって歳三様にぃ」
「馬鹿者! 殿から離れろ!」
「い〜や〜!」
再びしがみつこうとする飛燕を、彩が羽交い締めにする。
「祭、済まぬがこれでは話どころではない。まず、飛燕を何とかせぬか?」
「お、おう……そうじゃな」
あまりの騒ぎに、他の者まで起き出し……完全に静まるまでに一刻を要した。
「申し訳ありません! 処分は如何様にも!」
翌朝。
正気に変えた飛燕は、事の次第を知ったようだ。
先刻からずっと、私の前で頭を下げ続けている。
土下座という習慣があったならば、飛燕は躊躇なくそれを続けているだろう。
「いや、酔った上での事。此度は不問に付そうと思うが」
「いいえ。仮にも歳三様に対して、そ、そのような真似を……っ」
真っ赤になる飛燕の隣では、彩が苦笑いを浮かべている。
「全く、お前らしくもない。自我を見失う程酩酊する奴があるか」
「うう……。全く面目ない……」
「酒量を過ごした事はわからんでもないが……ハァ」
彩は頭を振ると、私を見る。
「殿、飛燕は生真面目な性格です。殿がお許しになっても、当人が納得しませぬぞ」
「だが、私にどうせよと申すのだ? 私は飛燕に何かを命ずる権限などないのだぞ?」
「いえ。相手が歳三様だから申し上げているのではありません。これは、人としてのけじめです!」
飛燕は頑なに言い張る。
……しかし、罰を与える程の事とはどうしても思えぬ。
確かに無礼ではあるが、飛燕のような美しき((おなご))にあのような真似をされて、それでもなお咎め立てする男など存在するまい。
「飛燕、歳殿が困っておるぞ。いい加
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