第二部 1978年
ミンスクへ
褐色の野獣 その3
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我が国が誇る科学アカデミーの学者達に、その製作ノウハウを学ばせるのです」
彼の話を、遮る声が響く
「随分と、その超兵器に入れ込んでいる様だが、それほど素晴らしいものなのかね」
周囲の人間が、声の主の方を振り向く
声の主は、ソ連邦の議長であった
彼は、平身低頭し、応じる
「議長、何でも鋼鉄の装甲を簡単に貫通するビーム砲を兼ね備えていると聞いております。
かの、光線級の攻撃よりも優れて居り、範囲も長大であるとの報告も聞き及んでいます」
そう述べると、彼は着席した
議長は、彼の言葉に思い悩んだ
西側に露見した時のリスクが高すぎるのだ……
同席したKGB長官も、同様の見解を示す
「今、我が国は存亡の瀬戸際だ。
その様な時に、西側と相対する真似はしたくはない……」
暫し思い悩んだ末、結論を絞り出す
「科学アカデミーが、全責任を取るという形ならば、名うての工作員を貸し出しても良い」
ソ連陸軍参謀総長の顔色は優れなかった
GRU(赤軍総参謀本部)肝煎りで進めた、《虎の子》のオルタネイティヴ3計画
去年の末、謎の攻撃によって水泡に帰した
聞いた噂話によると、彼が欲する超兵器によって消された
それが事実ならなんという皮肉であろうか
ドイツ国家人民軍に、駐留ソ連軍を通じて問い合わせる事を考える
『プラハの春』で、轡を並べたシュトラハヴィッツ少将に手紙でも書くとしようか……
小生意気な科学アカデミーの若造の企みを潰す為にも、奴らを利用させてもらおう
議長は、その場を締めくくる様に、告げる
「では、その日本人を聴取して、超兵器の秘密を入手せよ。
方法の如何は問わぬ」
その場にいる人間は、議長へ、了解の意を伝えた
マサキは、休日を利用して、西ベルリン市内に来ていた
動物園駅で、屋台のカレー・ソーセージを頬張りながら、佇む
遠くに見える、先次大戦の空襲で壊されたカイザー・ヴィルヘルム記念教会の廃墟を眺め、考える
偶々流れ着いた異世界
思ったより深く関わってしまった
それ故に、不思議な感情を抱くようになった
この、何とも表現できぬ焦燥感に悩む必要も無かろう……
その様にしていると、ホンブルグを被り、外套姿の4人の男に周囲を囲まれる
傍にある屑籠に食べ滓を捨てると、ドイツ語で尋ねる
「何の用だ……」
其の内の一人が、流暢なドイツ語で返してきた
「貴方が、木原マサキさんですね。
我々と共に、来ていただけませんか」
見ると、既に胸元には、ソ連製の自動拳銃が押し付けられている
奴等に聞こえる様、日本語で漏らす
「俺の意思は無視か。
蛮人の露助らしい、やり口だ」
左側に立つ男が、眉を動かすのが見えた
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