暁 〜小説投稿サイト〜
冥王来訪
第二部 1978年
ミンスクへ
褐色の野獣 その2
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(たかむら)と巖谷(いわたに)が来る
脇にオートバイのヘルメットの様な物を抱えている
彼は、ふと思い出した
あれは確か、美久が、この間持ってきた77式気密装甲兜という物
通電することで色が変化し、非常時には前面を金属製の装甲で覆うという良く判らない造りで、強化装備と同じくらい意味不明な物であった
あんな不格好な強化装備とヘルメットを被るくらいなら、まだ米空軍の戦闘機パイロットスーツとヘルメットを着る方がマシに思える……

「木原、休憩時間にはまだ早いな」
巌谷が声を掛ける
「何、俺は出歯亀(でばがめ)の相手をしていた迄だ。
何時ぞやは、美久と一緒に居るとき、覗いていた男だ」
(「中々の下種だよ」)
二人の男は渋い顔をする
「帽子男が、先日、こうほざいた。
『山吹の衣を着た武人の様に、外遊に行ってまで、他人(ひと)の女を寝取る趣味は無い』、と」
篁の目が据わる
「しかし何の話だ。俺には、さっぱり解らぬ」
彼は、真顔で篁に問うた
段々と二人の顔色が変わるを見て、聞くのを諦める事にした

 事務所に帰ると、隊長に叱責された
何が問題なのか、質した事が、再度の叱責理由になったのだ
日頃より自由気侭に振舞う彼は、組織の中では浮いた存在であった
一応、時間厳守や行事には参加するが、あまりにも有図無碍な態度に他のメンバーから問題視される
それが、今回の叱責の本当の理由であった
無邪気に問い質したのは、藪をつついて蛇を出す結果になったのだ

『「兵隊ごっこ」も、飽きた』
彼の偽らざる感想であった
あと3か月程我慢して、その後ソ連を焼いて、火星か、月でも消し飛ばすのも良いかもしれぬ
デモンストレーションとして実害の少ない木星の衛星ガニメデでも、良かろう
案外、化け物共の巣にでもなっているかもしれないし、感謝されこそすれ、恨まれぬであろう
 或いは、嘗て秋津マサトの人格が残っていた時の様に、敵に捕まって、奴等の反応を見るのも楽しかろう
あの時も、鉄甲龍の間者に捕まり、首領直々の拷問を受けたが、然程ひどい扱いではなかった
システム化された拷問方法があるKGB、CIAはともかく、ゲーレン機関やシュタージ辺りの田舎の組織では、洗練された尋問法も無かろう
少しばかり仄めかして揶揄(からか)い、遊ぶのも良かろう
最悪、奥の手を準備して置いて、逃げ出せばよい

 あまり考え事をしていては、風呂に入って温まった体も冷めてしまう
まさか、昼間忠告したであろうから、帽子男も覗き見せぬであろう
床に入ると、美久を行火(あんか)の替りにして、寝ることにした
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