第三章
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「今のその匂いがね」
「どんな匂いなの?」
「チーズの匂いよ」
ウォッシュチーズのそれだというのだ。
「食べたからね」
「その匂いがなのね」
「お口にあって」
それでというのだ。
「物凄く臭いわよ」
「硬直する位?」
「そうよ、ちょっと今日は無理」
仁美は思わず立ち上がって瞳に告げた。
「離れて食べよう」
「大袈裟ね」
「あのね、あんた食べ終わったらね」
昼食を終えればというのだ。
「すぐに歯磨きしなさい」
「歯磨き粉もハブラシも持ってないわよ」
「すぐに買ってよ」
そうしてというのだ。
「歯磨きしなさい、午後まだ大学に予定あるなら」
「今日は講義午前中で終わったし午後サークルもないわよ。アルバイトあるけれど」
「だったら食べ終わったらすぐに帰ってね」
家にというのだ。
「アルバイト行く前によ」
「歯を磨けっていうの」
「凄い匂うから」
「またそう言うのね」
「思わず硬直する位にね」
その臭さにというのだ。
「いいわね」
「大袈裟だと思うけれど」
「大袈裟じゃないから、じゃあいいわね」
「そこまで言うなら」
瞳も頷くしかなかった、そうしてだった。
食事を終えるとすぐに家に帰って歯を磨いた、そして翌日。
「歯を磨く時に匂いがしたわ」
「匂いが取れたわよね」
「ええ、そうなったけれどね」
「歯を磨く時も匂いが出るって位よ」
仁美は講義がはじまる前に隣にいる瞳に話した。
「臭いのよ」
「あの匂いがいいのに」
「よくないから、納豆でも全く敵わない位じゃない」
「くさやとか?」
「負けてないわよ」
「食欲をそそる匂いなのに」
「それはあんたが好きだからで」
その為でというのだ。
「匂いが駄目だとよ」
「無理なのね」
「そうよ、普通のチーズは人前で食べてもいいけれど」
「ウォッシュチーズは駄目なの」
「これからはね、いいわね」
瞳に怒った顔で言った。
「本当に驚く位に臭いから」
「硬直する位に」
「そうよ、あんな臭いものないわよ」
仁美はこうも言った。
「だからいいわね」
「もうこれからは」
「ウォッシュチーズは人前では駄目よ」
「わかったわ、じゃああのチーズはお家で一人で食べるわね」
「そうしてね、それで今日はどのチーズよ」
「カマンベールだけれど」
「それならいいわ、好きなだけ楽しんで」
仁美はそのチーズはいいと答えた、そうしてだった。
この日の昼食は二人で楽しく食べた、匂いも気にせずに。チーズも匂わなければ普通に美味しく栄養のある食べものであった。
フリーズ 完
2022・1・16
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