第三章
[8]前話
「これからはな」
「それがいいですね」
「これで畑仕事のない時民は仕事が出来ました」
「それにより餓えなくなりました」
「こちらがパンやビールを出しますから」
「住まいまで」
「それに暇もなくなったので」
廷臣達も口々に言う。
「尚いいです」
「悪事も行わなくなりました」
「しかも王の墓も築かれていっています」
「いいことばかりです」
「ではこれからもです」
「この様にしていきましょう」
誰もがこれはいいと確信した、そうしてだった。
アムホテプ王は次の年もその次の年も農閑期に民達に自身の墓を築かせた、そして死ぬとその墓にミイラとなり入った。
これは次のファラオもその次のファラオも行い。
長きに渡って続いた、そして時代は流れ。
ピラミッド達を見る観光客にガイドが話した。
「ピラミッドは農閑期に築かれました」
「畑仕事がない時に」
「その時にですね」
「仕事がない国民に仕事を与えていたんですね」
「失業対策だったんですね」
「はい、それで自分のお墓を作っていました」
そのピラミッドをというのだ。
「そうでした」
「そうだったんですよね」
「ヘロドトスは民を無理に働かせていたって言っていますが」
「その実はですね」
「失業対策だったんですね」
「言うなら公共事業ですね」
ガイドは笑ってこうも言った。
「それをしていたんです」
「遥か昔にですね」
「もうそうしていたんですね」
「失業対策で仕事を与えて」
「それで仕事のない人が犯罪に走らない様にもした」
「犯罪対策でもあり」
「それにそれで経済も回りますし」
観光客達も話した。
「自分のお墓も築ける」
「いいこと尽くめだったんですね」
「しかも神の化身であるとされるファラオのお墓を築きますから」
「神聖な行いに参加していますし」
「いいことをしている」
「だから死んだら天国に行けますね」
「そうした考えもあったんですね」
「ですから本当に長い間です」
エジプトの長い歴史の中でというのだ。
「ピラミッドは築かれていました」
「そうでしたね」
「紀元よりも長い間」
「その間ずっと築かれていましたね」
「そうです、それもピラミッドの歴史です」
ガイドは笑顔で話した、そして彼もまたピラミッド達を観た。古い歴史のあらゆる姿を自分達に見せるファラオの墓を。
ピラミッドは 完
2021・11・12
[8]前話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ