第二部 1978年
ミンスクへ
褐色の野獣
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(あい)分かった。ではこちらで《相応の話》を用意しようではないか。
それでどうだね、諸君!」
脇に居る《ビジネスマン》二人は頷いて応じた
「では、明日の仕込みもありますので、この辺でお暇させて頂きます。
《旦那》」
キャスケットの鍔を持ち上げて、挨拶をすると、車に乗り込む
深緑色のトラックは、元来た道を駆け抜けていった
紳士は、トラックが立ち去るのを見届けると、周囲を窺う
山高帽の男は、持ってきた革張りのアタッシェケースから電動工具のような外観をした物を取り出す
ベトナム戦争で使われた『M10』と呼ばれる小型機関銃で、銃把の下から弾倉を差し込む
コッキングレバーを引き、何時でも射撃可能なように、つり革を左手で掴む
《安全》が確認された後、懐中電灯を取り出し、ファイルを再び見た
「これは、東ドイツの戦術機部隊長の妹ではないのか……」
紳士は、思わず独り言を漏らした
脇から、トレンチコート姿の男が、改めて覗き込む
見目麗しい、金髪碧眼の美女の写真
Irisdina Bernhard.
1959年9月8日生まれ
その他、家族構成や子細な情報が独語の原文と、別刷りの紙に英字のタイプで書き込んである
「アイリスダイナ・バーナードと読むのでしょうか」
日本人の男は、考え込むような素振りをする
「中々の麗人で御座いますな」
英国紳士は、表情を厳しくして言う
「諸君!これは大事になったぞ。今しがた入れた東ドイツ財政の機密資料の比ではない。
本物の《閻魔帳》だ。
しかも、戦術機部隊メンバーに関する物であることは間違いない」
彼は、帽子の鍔を握る
「我々も、奴等の政治的策謀に載せられていると言う事だよ」
山高帽の米国人《取次人》が、問う
「《旦那》、どうしますか。解せぬ話ですが」
紳士は、米人に返答する
「君も、《会社》に持ち帰って話し合い給え。
こればかりは、我等で判断できるレベルではない……」
紳士は、トレンチコート姿の男を振り向く
「《鎌田》君、一旦日本に持ち帰り給え。これは大事だよ。
下手すれば、西ドイツの宰相の首が再び飛びかねん」
男は、中折帽のクラウンに手を置く
「いやはや、今年はとんでもない年になりそうですな」
米人が同調する
「ああ、全くだ。お月さんに化け物が巣食ったときよりも酷え年になりそうだ」
男達の談笑の声が、深夜の森に響いた
「この話は本当なのか、同志シュミット将軍」
「議長、小職は、そう伺っております。
アスクマン少佐が、直々に《仕入れた》情報を精査した結果、その様な結論が出ました」
濃紺の背広を着た男が、椅子に深く腰掛ける
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