暁 〜小説投稿サイト〜
冥王来訪
第二部 1978年
ミンスクへ
青天の霹靂 その5
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t of Columbia/コロンビア特別区)に届けよ」
両手で親書を受け取ると、国防長官は最敬礼の姿勢を取る
そして部屋を後にした

「若かりし頃、《コロンビア》の寡婦(かふ)に熱を上げたが、今思えば愚かな事であった物よ……」
脇に立ち尽くす首相へ、聞こえる様に囁く
「そなた達が、自死を持って迄、(いさ)めてくれたからこそ、今日(こんにち)の余があると言っても過言ではない」
首相は、その男の顔を直視できなかった
「臣民が、王朝の弥栄(いやさか)を願う気持ち。無駄には出来ぬからな」
龍顔(りゅうがん)から流れ出る滂沱(ぼうだ)の姿を見て、彼は(むせ)び泣いた



 「この愚か者共が!」
深夜の宮殿内に、怒声が響き渡る
「閣下、お怒りをお納めください」
初老の男は、彼を諫める秘書官たちを一括する
「貴様等は、揃いも揃って、英米に先を越されるとは何事か。
この栄光ある、第五共和国(フランス)に泥を塗りつけているのと何ら変わりはない」
彼は、椅子に腰かけ、腕を組む
「あの老人共にコケにされてるのは、()()りだ」
暫し、瞑想(めいそう)をすると、目を見開き、言葉少なに答える
「首相を呼べい!」
秘書官が恐る恐る問いかける
「閣下、今は深夜一時で御座います。今から呼び立てるとは……」
「事は急を要する。そして奴の他を置いてこの工作を行える人物はいない」
秘書官が問い直す
「なぜですか。ほかにも、専従工作員や軍のクーリエがおります」
右手を持ち上げ、天井を指差す
「奴には、日本国内に(めかけ)がおって、そしてその女との間に子が有る。
その女は、武家の娘と聞く。
彼女を通じて、城内省に話を付けてもらう」
一同に衝撃が走る
「例の新型機(ゼオライマー)に関する情報は、城内省の中に立ち入らねば手に入れられぬ。
(まさ)に『虎穴に入らずんば虎児を得ず』とは、この事よ」
机の上に有るシガレットケースを開け、フィルター付きのタバコを取り出すと、火を点ける
《ジダン》(Gitanes)の青色の箱から開け、詰め替えた物であった

「そうよのう、この《ジダン》の様な、壮麗な踊り子でも用意して、戦術機の衛士に近づけよ」
タバコを吹かし、吐き出す
「どの様な人物か知らぬが、男であれば、転ぶ様な絶世の美女を仕立て上げてな」
彼は不敵の笑みを浮かべた後、こう告げた
「《フリッツ》共に先を越されてはならぬ。あの負け犬共には、その地位に甘んじてもらわねば」
タバコを、右手で灰皿に押し付け、もみ消す
「我が国の平安の為に、彼等は永遠にその立場に据え置かねばならぬのだよ」
そう答えると、再び瞑想の世界に戻った



 ボンの合同庁舎では、深夜を過ぎても作業が続いていた
三か月後に迫っ
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