第二章
[8]前話
三人で工具も使って排水溝の蓋を何とか開けてその奥にいる白人で群青色の目の女の子を救助した、だが。
「アカアリガ多くて」
「我々は噛まれたな」
「全くです」
排水溝の上の方にアカアリの巣があり三人共噛まれたのだ。
「参りました、これには」
「うん、しかし赤ちゃんは噛まれなくてよかった」
「そうよね」
「それでなんですが」
ビジョアンは夫婦にあらためて話した。
「赤ちゃんですが」
「助けたが」
「これからどうするか」
「誰の子供か気になりますし」
それでというのだ。
「警察とも相談して」
「親を探すか」
「そうしましょう」
三人で話してだった。
夫婦が警察に話をした、そうしてだった。
教会が運営している孤児院に預けられグレース=エイプリルと名付けられ育てられることになったが。
「親はか」
「わかっていないんですか」
「はい、身元はです」
孤児院の神父が夫婦に話した。
「全くです」
「誰が排水溝に捨てたのか」
「そのことも」
「そうです」
これがというのだ。
「どうも」
「手掛かりがですか」
「ありません」
そうだというのだ。
「これはミステリーです」
「そうなのですか」
「とんでもないことですが」
それでもというのだ。
「一切手掛かりがないです」
「そうなのですね」
「はい、ですが」
「それでもですか」
「グレースは必ずです」
神父はシャーメインに確かな声で答えた。
「私達が育ててです、きっとです」
「幸せにしてくれますか」
「そして里親になりたい人が出て来たら」
その時はというと。
「その人達がいい人達ならば」
「子供にですか」
「迎えてもらって」
そうしてというのだ。
「そこからもです」
「幸せになってもらいますか」
「そうします、必ず」
「宜しくお願いします」
シャーメインだけでなく夫もだった。
神父に頼んだ、そうして孤児院を後にしたが常に孤児院からグレースの連絡を受けた。彼女はすくすくと育っていてその話を聞く度に夫婦とこのことがきっかけて夫婦と友人になったビジョアンは喜んだ、そしてだった。
彼女を見付けてくれたジョージーにだ、笑顔で言った。
「お前のお陰だ」
「貴方があの娘を助けたのよ」
「素晴らしいことをしたな」
「ワンッ」
ジョージーは三人の言葉を受けてそれ程でもという感じで鳴いて応えた、胸を張る様なその仕草も見て三人はさらに笑ったのだった。
排水溝の中の赤ちゃん 完
2022・2・26
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