第二部 1978年
ミンスクへ
青天の霹靂 その4
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掛けてある
長官は、案内役の声を聴くと立ち上がり、部屋の明かりをつけるよう指示した
閉じた目を開くと、左手に嵌めたタイメックスの腕時計を流し見した後、彼の方を向いた
「私も、今流行りのニューエイジ・カルチャーの研究をしていたのだよ。
なんでも西海岸では、BETAを神から使いと崇める狂信者共が出始めたと聞いている。
奴等は、阿芙蓉やマリワナの吸い過ぎで、気が狂ったかと思ったが違うらしい。
本気で、神に縋り始めていると言う事だよ」
左手に抱えた資料を置くと、机に座るよう指示されたハイネマンは、長官に問うた
「私の事を、呼び立てたのは、そんな世事に関する話ではないでしょう」
長官は、床に敷いた濃紺の羊毛製絨毯の上に立ち、ストレートチップの茶革靴を履きながら、応じる
「日本で新型戦術機が開発された話は知っていよう」
彼の顔色が豹変する
「篁という男が、この件で帰国したのは我々も掴んでいる。
君も浅からぬ間柄であろう」
靴を履くと、屈んで絨毯を巻き上げる
「ブリッジス君の事が、忘れられぬか。
あの貴公子に、寝取られたことを昨日の事の様に悔やんでいるのも分かる。
良い女なら、私の方で世話をしよう」
彼は、勢い良く立ち上がる
「その様な話をしに来たのではありません。
私は帰らせていただきます」
強い麝香が立ち込める室内で、男はオイルライターを取り出し、着火させる
『SALEM』の文字が掛かれた白と緑の紙箱から、白色のフィルター付きタバコを取り出し、火を点ける
紙巻きたばこを深く吸い込み、重く苦しい話から逃れるべく、バージニア種の甘みと薄荷の味付による爽快感
一時の安らぎを求めた
「待ちたまえ。君に詰まらぬ話をさせに来たのではない。
実は、大型戦術機のデータをわが方で得たのだよ。
彼等の機体は、核動力相当の新型エンジンで動いていると言う事が判明した」
「お待ちください。その話が本当であるならば、自分はこの案件には関係ありません。
それは、すでにロスアラモスの扱いです」
彼は語気を強めて、眼前の男に請う
「お願いです。私はこの案件には、関わりたくありません。
確かに、篁には複雑な感情は持っています。
ですが、技師としては、その様な操縦者への悪影響が計り知れない核搭載エンジンの戦術機という禁じ手は、魅力的です。
しかし、新元素の解明も途上の今、その様な怪しげなものに頼り切るのは、些か不安が拭えぬのです」
長官は、椅子に腰かけると、彼に向かって言った
「新型機のパイロットは、自分を何と評したか、知っているか」
訝しむ彼を横目に続ける
「《冥王》だそうだ」
思わず、目を見開く
「……つまり地獄の
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