第二章
[8]前話
彼女の夫からふわりをもういらないと言われて処分を頼まれた保健所の人が来て彼女に言ってきた。
「ここは人間の処分はしてないですよ」
「人の?」
「そうですよ、いらないと決め付けられて送られてきた子達の処分はしてますがね」
それでもというのだ。
「最近はどの子も保護団体の人が引き取って里親を探してくれるんで実際はしてないですが」
「そうなんですか」
「そうなんですかじゃなくてですね」
保健所の人は百田家の妻に怒った顔で告げた。
「そんなことも考えを及ばさないで犬飼ってたんですか」
「それが駄目ですか」
「駄目じゃないですよ、犬も命があるんですよ」
近所の人達と同じことを話した。
「そして心があるんですよ」
「犬にもですか」
「人間と同じですよ」
このことはというのだ。
「本当に、だから愛情も持つんですよ」
「たかが犬じゃないですか、愛情なんて」
「持ちますよ、貴女も旦那さんも愛されていたんですよ」
ふわり、彼女にというのだ。
「その愛情を裏切って捨てて死んでしまえでしたけれど」
「私達の持ちものだったんですよ」
「持ちものじゃなくて家族ですよ、家族を平気で捨てて死んでしまえだったんですよ」
こう言って批判した。
「貴方達は。そのこともわからないで生きもの飼わないで下さい」
「言ってくれますね」
「言いますよ、ですがここは人間の処分をしてないので」
それでというのだ。
「二度と来ないで下さい、邪魔ですから」
「私が邪魔って」
「人間の処分はしてないですから、それに」
彼女にさらに告げた。
「この世の何処にも貴方達を必要としてないですから」
「私達を」
「命や心を粗末にする人は誰も何処もです、ですから二度と来ないで下さい」
こう告げてだった。
保健所の人は百田家の妻にしっし、と右手でやって邪険な顔で告げてだった。
追い返した、彼女はそれを受けて怒っていたが保健所を出て言ったが。
家に帰って何もなくなっている家の中でただひたすら酒を飲んだ、懲戒免職を告げられて家に帰ってきた夫もだった。何もなくなった夫婦は以後酒にしか相手にされなくなった。
犬の気持ちを知れ 完
2022・2・23
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