第二章
[8]前話
「美紀子さんが二十歳になったら」
「そうするしかないし」
「自分で納得して待ちなはれ」
あと十二年そうしろと言うのだった、そしてやはり伸成にはそうするしかなく。
彼は働きながら待った、その間美紀子に会う度に彼女に二十歳になったら結婚すると話することも周りがした。
そうしていてだった。
美紀子はさらに成長し中学生になり高校生になり遂にだった。
成人式を迎えた、この時彼女は大学生だったが。
式を終えて振袖姿で伸成の前に来たがその彼女を見て彼は思わず息を呑んだ。
奇麗な黒髪を後ろで団子にして束ねやや丸顔で切れ長の睫毛の長い目、目に添った形の細い眉に桃色の小さな唇に雪の様な白い肌だった。
一五二程の背の彼女をだった。
一七六あり均整の取れた体格と整った中に三十五年の年齢を重ねた彼は見て息を呑んでからこう言った。
「いや、いつも会っていたけれど」
「それでもですか」
「二十歳になった美紀子さんは」
まさにと本人に話した。
「信じられない位奇麗だよ」
「そう言って下さいますか」
「こんな奇麗な人を迎えられるなんて」
妻としてというのだ。
「僕は幸せだ」
「私の誕生日の日がです」
美紀子はその伸成に話した。
「結婚式ですから」
「もうすぐだね」
「大学はそのまま通わせてもらいますが」
地元の大学にというのだ。
「それからはです」
「一緒にだね」
「暮らすことになります」
「そして卒業すれば」
「お仕事のお手伝いを」
彼の妻としてというのだ。
「させて頂きます」
「それではその時を頼むよ」
伸成は笑顔で応えた、そうしてだった。
二人は美紀子の誕生日に結婚式を行い籍も入れた、式は京都の古いそれも知られた家なので和風で美紀子は白無垢姿で紋付羽織袴の伸成と共に座った。そして。
程なく長男が産まれたが伸成の父は息子に言った。
「孫が産まれたことはいいが」
「時期がですか」
「式を挙げて半年後だが」
「それは言わないで下さい」
伸成は俯いて答えた。
「何かとありまして」
「何時からだった」
「妻が十五歳の時から」
「そうか、そのことは絶対に言うな」
誰にもというのだ。
「いいな」
「言いません、こんなことは」
「ならいい、何はともあれ孫は産まれた」
「そのことはですね」
「いいとしよう、これからも幸せにな」
こう自分の息子に告げた、そして二人は子宝にも恵まれ夫婦で会社を経営し幸せな家庭を築いた。十五歳歳が離れていても絆は確かなものだった。
二十年待て 完
2022・2・21
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