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レーヴァティン
第二百四十話 運河の街でその九

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「どうしてもそうなりますね」
「髭があってもな」
 例えそうであってもだ。
「抜けてな」
「なくなりますね」
「それが宦官の見た目の特徴だろ」
「左様です」
「この浮島カストラートもいるけれどな」 
 子供の頃に去勢した歌手だ、こうすると声変りが起こらず高い声をそのまま出せる体質でいられるのだ。
「そのカストラートもだろ」
「髭はありません」
「それで髭がなくてな」
 その為にというのだ。
「政争で宦官が殺されてる時にな」
「宦官と間違えられてですか」
「殺されたって話もあるんだよ」
「それは災難ですね」
「だからその部分を見せてな」
 男のというのだ。
「難を逃れたんだよ」
「そこまでして」
「ああ、そうしてな」  
 そのうえでというのだ。
「滑稽だけれどな」
「本人達は必死ですね」
「さもないと殺されるからな」
 宦官と間違えられてだ、中国の後漢末期の政争で袁紹や曹操が宮廷に兵を率いて乗り込んだ時のことである。
「そうしたんだよ」
「髭があるかないか」
「この通り黄色人は薄いからな」 
 この浮島の多くの者達、白人と違ってというのだ。
「それでだよ」
「生えていない者も多くて」
「そうなったんだよ」
「そうですか」
「肖像画を描かせても」 
 その場合もというのだ。
「髭がないんでつけ髭を付けてな」
「そうしてですか」
「描かせた場合もあるんだよ」
「そうした場合もありましたか」
「そうだよ、豊臣秀吉さんな」
 有名な礼装の肖像画がそうであったという。
「髭がないんでな」
「付けてですか」
「貫禄がある様に描かせたんだよ」
「そうしたこともあったのですね」
「俺自身毎日剃っていてもな」
 事実そうしている、尚彼は自分で剃っている。
「他の奴程にはな」
「時間をかけていないですか」
「すぐに済むな」
 薄く生えている部分も少しでだ。
「逆に濃い堂々とした髭はたくわえられないけれどな」
「そこまで薄いですか」
「ああ、けれど剃るならな」 
 それならというのだ。
「薄くていいな」
「それでは陛下は」
「体毛は薄くていいしな」
「お髭もですね」
「ああ、ただし髪の毛はな」
 ここで久志は笑ってこうも言った。
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