第一章
[2]次話
性的嗜好の恐怖
漫画家のムサカは本名を鳥居賢一という、デビューして十年アニメ化作品が三つもあり単行本も売れている。
そんな彼の趣味はゲームと酒であるが彼も男なので女性に興味がある。それで時折風俗店に行くのだが。
「先生またですか」
「ああ、またなんですよ」
自宅に来た担当の深井和明に話した。細面で色黒で黒髪をセンターに分けている細い目の痩せた中年男だ、背は一七三程で今は自宅の中なので上下共に黒のジャージ姿だ。
「昨日行ってきて」
「楽しんできたんですね」
「ソープをね」
「先生ソープ好きですね」
「ええ、大好きです」
深井に笑って答えた。
「あそこのプレイ全部が」
「それで行ってきたんですね」
「早朝サービスに」
「そうそう、ソープって早朝サービスだと安いですよね」
深井も知っている顔だ、小太りで目尻に皺が付いている。二重の明るい目で色白だ。髪の毛は右で分けている。
「そうですよね」
「ええ、ですから」
「ちょっと行ってきてですね」
「すっきりしてきました」
「じゃあ執筆もはかどってますか」
「ネーム出来ました」
鳥居は深井に満面の笑みで答えた、表情は爽やかで脂も抜けている。
「今からお渡しします」
「有り難うございます、しかし先生はソープ派ですが」
深井は彼のその趣味の話をした。
「私はあれなんですよ」
「デリヘルですね」
「デリヘルいいですよ」
鳥居ににこにことして話す。
「コスプレもありますし」
「深井さんコスプレお好きですね」
「セーラー服萌えますんで」
それでというのだ。
「大好きです」
「そうなんですね」
「はい、ですから」
それでというのだ。
「よく行きます」
「それで楽しんできますね」
「ええ、それでいいお店見付けてきたんで」
「またですね」
「お金出来たら行ってきます」
二人でネームを渡す前にそんな話をした、ネームの内容は深井は満面の笑顔で最高ですと言ったものであった。
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