第2部
エジンベア
脱・田舎者作戦
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「つ、疲れた……」
疲労困憊のなか、やっと絞りだした第一声がこれだった。
エジンベアで開かれる美少女コンテストに出場するために、アッサラームでユウリと別れ、アルヴィスとビビアンに協力してもらうことになったのだが、その内容は想像を絶する厳しさだったからだ。
開始早々、私は二人に都会の女性らしい振る舞いや所作などを教わることになったのだが、それはもう今までの和気あいあいとした雰囲気ではなく、ほんの少しでもミスをしたらビビアンの檄が飛ぶ、もしくはアルヴィスの鋭い殺気が突き刺さるといった、殺伐とした空気だった。
初日は二人にさんざんダメだしされて食事もとらず、一日が終わってしまった。その日の夜から私はアルヴィスの店舗兼自宅で寝泊まりすることになり、翌日も早朝から二人に叩き起こされ、同じことを繰り返し行った。
その時の状況を思い起こそうとしても、頭が無意識に拒絶しているのか、まったく思い出せない。ようやく二人がOKサインを出してくれた三日目には、彼女たちの視線に気づくだけで体が勝手に反応するぐらいまでになっていた。
四日目からはビビアン直伝の踊りの練習。もしコンテストで特技などを披露しなければならないとき、武術なんていう全く女性らしくないことを見せるわけには行かないと考えたからだ。
とりあえず付け焼き刃でもいいから、基本的な動きを身に付けようと、二日かけて習得した。劇場にも足を運び、他の踊り子の踊りを見て研究したりもした。その結果、なんとかビビアンにOKがもらえるくらいまでは上達した。だけど、あくまでもその場しのぎの策なので、誤魔化しきれるかは不安ではある。
その間、アルヴィスに教えられた美容に関する知識やケアを毎日続け、さらにはアルヴィス御用達のお店で買った薬などを服用した結果、五日目には効果が現れ始めた。毎日魔物と戦い、野宿続きで肌も髪もボロボロだった私の体は、見違えるように綺麗になっていった。
そして迎えた六日目。コンテスト前日だからと、当日の衣装や小物などの調達も兼ねて、三人で息抜きがてら買い物をしようということになったのだが。
最初は皆で買い物ということで、新鮮さもありとても楽しかったのだが、次々と商品をチェックする二人のペースにだんだんついていけず、しまいには私だけ店の外で待機、という形になってしまった。
冒頭の台詞も、アッサラーム中の店を歩き回って疲れ果て、つい独り言を漏らしたのである。
ビビアンとアルヴィスが入っていったお店の外壁に背中を預け、傾きかけた空を見上げる。ふうと息を吐くと、怒涛の一週間が思い起こされた。大変ではあったが、ビビアンもアルヴィスも、自分の仕事や私生活を削ってまで私のために尽くしてくれたのだ。二人には感謝してもしきれない。
いよいよコンテストは明日だ。あれからユウリには会っていな
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